白ごまと黒ごまの違い ― 薬膳で選ぶ、40代の体と心に寄り添うごま習慣

②【食】

40代に入ってから、体調や気分のちょっとした変化に気づくことが増えてきました。疲れやすさ、肌の乾燥、夜の眠りの浅さ。年齢のせいと片づけたくはないけれど、たしかに以前とは違う。そんな毎日の中で、食べることを「整える」時間に変えてくれたのが、薬膳の考え方です。今回は、身近でありながら奥の深い食材、ごまに注目します。

スーパーに並ぶ、白ごまと黒ごま。色が違うだけでしょう、と私も長いあいだ思っていました。でも薬膳では、この2つはまったく違う役割を持っているとされています。白ごまは、潤す。黒ごまは、養う。そして40代の体には、どちらも心強い存在です。

白ごま ― 潤いを補う

薬膳では、白ごまは「肺」「脾」「大腸」に働き、体に潤いを与えるとされています。40代になると、肌や髪、喉の乾燥が気になる方も多いと思います。便秘がちだったり、季節の変わり目に肌がかさついたり。そんなとき、白ごまは自然な支えになってくれます。

東洋医学では、「肺」が皮膚や粘膜と深く関わると考えられています。秋から冬にかけて空気が乾燥すると、喉がいがいがしたり、肌が粉をふいたりします。こうした変化は「肺が乾いている」サインとされ、白ごまは、この乾きをやわらげる食材として古くから使われてきました。また、「大腸」に働くことから、お通じを助けるともいわれています。

私の定番は、白ごまペーストでつくる白和えです。豆腐と白ごまをなめらかに混ぜて、小松菜やにんじんを和えるだけ。体も心もやわらかくほぐれていくような感覚があり、夜のくつろぎの時間にぴったりです。

黒ごま ― 年齢による変化に寄り添う

一方、黒ごまは「肝」と「腎」に働き、年齢による変化をゆるやかに整えてくれる食材とされています。白髪や、足腰のだるさ、疲れが抜けにくい、眠りが浅い。そんなことが気になり始めたら、黒ごまを意識して取り入れてみてください。

東洋医学では、「腎」は生命力のもとと考えられていて、骨や髪、耳、そして老いと深く関わるとされています。「髪は腎の華」という言葉があるほど、髪の状態は腎の状態を映すといわれてきました。そして、黒い食材は腎を養う。これが、薬膳の基本の考え方です。黒ごまや黒豆、黒きくらげ、ひじき。40代からは、意識して「黒」を食卓に、というのはそのためです。

黒ごまは外皮が硬く、そのままでは吸収されにくいので、すりごまかペーストで摂るのがおすすめです。私の習慣は、朝のスムージーに黒ごまペーストを入れること。ケールやブルーベリー、豆乳と合わせると、まろやかで香ばしく、朝のエネルギーになってくれます。

栄養で見る、ごまの力

薬膳の視点だけでなく、栄養の面でも、ごまは頼もしい食材です。

ごま特有の成分であるセサミン(ゴマリグナン)は、抗酸化作用があることで知られ、肝臓の働きとの関わりも研究されています。抗酸化ビタミンの代表であるビタミンEも含まれていて、血行を促す働きがあるとされ、セサミンと一緒に摂ることで働きやすくなるともいわれています。

カルシウムは、ごま100gあたり約1,200mgと、実は牛乳よりも多く含まれています。ただ、体への吸収のされ方は牛乳より低いとされているので、期待しすぎないほうがよいと思います。鉄も含まれていて、貧血が気になる40代の女性にはうれしい栄養素です。ビタミンCと一緒に摂ると、吸収が高まるとされています。

ごまのおよそ半分は脂質で、主な成分はリノール酸とオレイン酸です。セサミンが酸化を防いでくれるので、油の中では比較的安定しています。

白ごまと黒ごまで、基本的な栄養はほぼ同じとされています。違うのは、黒ごまの外皮にある黒い色素成分で、ポリフェノールの一種として抗酸化作用が注目されています。黒ごまのほうが年齢のケアに向いているといわれるのは、この違いからです。ただ、劇的な差ではありません。どちらも栄養が豊富なので、好みや料理に合わせて選ぶのがいちばんです。

食べ方で、吸収のしやすさが変わる

ここが、いちばん大切なポイントかもしれません。ごまは、食べ方によって、栄養の吸収のしやすさがまったく違います。

ごまの粒は、硬い外皮に覆われています。そのまま食べても、噛み砕けずに体を通り過ぎてしまうことが多いのです。ごまを食べているのに効果を感じない、という場合、理由はここにあるのかもしれません。

かたち吸収のしやすさ特徴
いりごま(粒のまま)低い香りはよいが、外皮が壊れていない
すりごま高い外皮が砕けて、栄養が吸収されやすい
練りごま(ペースト)とても高いすりつぶされていて、いちばん吸収しやすい
ごま油―油に溶ける成分は摂れるが、食物繊維やミネラルは残らない

手軽さなら、料理にふりかけるだけのすりごま。しっかり摂りたいなら、スムージーやヨーグルトに混ぜやすい練りごまがおすすめです。すりごまは酸化しやすいので、開封したら冷蔵庫に入れて、1か月くらいで使い切るようにしましょう。

山田製油 石臼挽き すりごま(白)山田製油 石臼挽き すりごま(白)
山田製油 石臼挽き すりごま(黒)山田製油 石臼挽き すりごま(黒)

いりごまを使うときは、食べる直前に指でつぶしたり、すり鉢で軽くすったりするだけでも違います。指先でひねりながらふりかける「ひねりごま」という方法もあり、香りが立って、吸収もしやすくなります。昔からの知恵です。

種類と選び方

スーパーには、いろいろなごまが並んでいます。色で見ると、いちばん一般的でくせの少ない白ごま、外皮に黒い色素を含み風味がやや強い黒ごま、そして香りとコクがいちばん豊かとされる金ごま(黄ごま)があります。金ごまは高級品として扱われ、懐石料理や、素材の味を生かしたい料理に使われます。

加工の仕方でも分かれます。洗って乾かしただけの洗いごまは、自分で炒って使うもので、炒りたての香りは格別ですが手間はかかります。炒った状態で売られているいりごまは、すぐ使えて便利です。すりごまは、炒ってからすりつぶしたもの。練りごまは、さらにすりつぶしてペーストにしたもので、濃厚で料理の幅が広がります。

選ぶときは、まず原材料のシンプルさを見てください。練りごまなら、原材料が「ごま」だけのものがおすすめです。砂糖や添加物が入っているものもあります。また、国産のごまはごくわずかで、ほとんどが輸入品です。どこで育ったごまかが書かれていると、選ぶときの安心材料になります。そして、ごまは酸化しやすいので、使い切れるサイズを選ぶほうが、結局は無駄がありません。

山田製油 ごまねりねり(練りごま)白山田製油 ごまねりねり(練りごま)白
山田製油 ごまねりねり(練りごま)黒山田製油 ごまねりねり(練りごま)黒

1日の量と、保存の注意

ごまは栄養が豊富なぶん、脂質も多い食材です。1日に大さじ1〜2杯(10〜20gほど)が目安とされています。体にいいからといって、たくさん摂ればいいというものではありません。大さじ1杯で、60kcalほど。少しの量でもエネルギーがあります。

ごまは酸化しやすいので、保存にも気をつけたいところです。いりごまやすりごまは、開封したら冷蔵庫へ。とくにすりごまは酸化が早いので、1か月くらいで使い切りましょう。練りごまも、開封後は冷蔵庫で保存します。油が分離することがありますが、混ぜれば問題ありません。洗いごまは冷暗所に置いて、使う分だけ炒るのが理想です。

ごまは、アレルギーを起こすことがある食材です。日本では「特定原材料に準ずるもの」として、表示がすすめられています。初めて子どもに食べさせるときや、アレルギー体質の方は、少しの量から試してください。口の中のかゆみやじんましん、腹痛などが出たときは、すぐに食べるのをやめて、医療機関に相談してください。

季節と体調で、使い分ける

薬膳では、季節や体調に合わせて食材を選ぶのが基本です。乾燥しやすい秋冬や、お通じが滞りがちなときは白ごま。疲れがたまりやすい時期や、年齢による変化を感じるときは黒ごま。そんなふうに使い分けると、選ぶ楽しさも生まれます。

私の取り入れ方は、季節によって少しずつ変わります。春は、菜の花などの春野菜を白和えに。夏は、冷やし中華や冷ややっこに、すりごまをたっぷり。秋は、乾燥が気になり始めたら白ごまペーストを。冬は、黒ごまペーストを温かい豆乳に溶かして。「今日はどちらを使おうか」と考える時間が、私にとっての小さな薬膳です。

整えるために、食べる

ただ食べるだけでなく、整えるために食べる。そんな薬膳の考え方を、40代の今だからこそ大切にしたいと感じています。

毎日きっちり摂る必要はありません。「今日は疲れているから黒ごまを」「乾燥が気になるから白ごまを」。そのくらいのゆるやかな意識で十分です。朝の黒ごまのスムージー、夜の白ごまの白和え。日々の私時間に、ごまの香りと栄養をひとさじ。そんな小さな習慣が、自分をいたわる力になっていくはずです。

※本記事は一般的な情報と薬膳の考え方のご紹介です。ごまアレルギーのある方は、食べるのを避けてください。持病のある方、薬を服用中の方は、食生活を変えることについて医師にご相談ください。

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