40代になってから、私は以前よりも「体のささやき」に敏感になりました。
とくに感じるのが、胃の不調です。冷たい飲み物を続けて飲んだときや、仕事や人間関係で強いストレスを感じたとき。みぞおちのあたりがじわっと重たくなり、「あ、これは休むサインかも」と、体がそっと教えてくれるような気がします。
13年前の胃潰瘍と、今も続く“サイン”との向き合い方
13年前、私は一度胃潰瘍を経験しました。仕事と生活のストレスが重なっていた時期で、病院で診断されたときは、「こんなに自分を追い込んでいたんだ」とショックを受けました。
あれから13年。完治してからも、ちょっとした冷えや緊張が続くと、当時の痛みがふとよみがえるような感覚におそわれます。
先日、そのことを通っている鍼灸の先生に伝えると、「一度傷ついた胃の組織は少しかたくなるんです。だから、冷えやストレスでその部分が引っ張られると、痛みが出やすくなる」と言われ、深く納得しました。
鍼と温灸で、体の深部からやさしく温める
今回、先生が提案してくれたのは、鍼の上にお灸をのせる「温鍼灸(おんしんきゅう)」という施術でした。
細くやさしい鍼を胃の周辺に打ったあと、鍼の先端に小さな艾(もぐさ)をのせて火をつけ、じんわりと熱を伝えていきます。ピリピリとした刺激ではなく、体の奥までやわらかく温めるような、まろやかな熱感。
お腹の奥からじわ〜っと温かさが広がっていくような心地よさに包まれ、「あ、緊張していたのは体だけじゃなく、心もだったんだ」と気づかされました。
翌朝にはふっと軽くなる、心と体の変化
不思議なことに、施術を受けた翌朝には、あの重たい胃の違和感がすっと消えていたのです。
呼吸も深くなり、朝の支度中にふと「今日、なんだか心が静かだな」と感じました。
鍼灸は単なる治療ではなく、自分を整え直す静かな時間。そんなふうに思えるようになったのは、40代の今だからこそかもしれません。
痛みは「悪いもの」じゃない。体からのやさしいメッセージ
以前の私は、不調があるとすぐに「またダメだ」「ちゃんとしなきゃ」と、自分を責めてしまっていました。でも今は、不調も「ちゃんと気づけてよかったね」という体からのメッセージだと思えるようになっています。
胃の痛みも、冷えも、ストレスも、「あなたのペースを思い出してね」と教えてくれているようなもの。そう受け止められるようになると、不調さえもありがたいものに変わる気がします。
日常の中でできる、“冷え”を遠ざける小さな習慣
施術後からは、できることから“冷え対策”を少しずつ取り入れるようになりました。
夏でもお腹を冷やさないように腹巻を愛用
冷たい飲み物は少し控え、できるだけ常温か白湯に
自宅でできるお腹まわりのセルフ灸を週に1〜2回
これらの小さな工夫が、思っていた以上に心と体を整えてくれます。冷えは見えにくい存在ですが、確実に心身のバランスに影響を与えていると感じています。
40代からの私時間に、東洋医学という“やさしい選択”を
鍼灸の時間は、私にとって“治す”というよりも、“整える”ためのひととき。
静かな音楽が流れる施術室で、目を閉じ、じんわりと体の中に熱が届いていく感覚に集中する―そんな時間が、忙しい日常の中での「呼吸」になっています。
体の声に耳を傾け、やさしく受け止めること。
それは、40代からの「私らしさ」と「心地よさ」を育てていく第一歩なのかもしれません。
これからも、私の静かな“私時間”を支えてくれる鍼灸の力を、ていねいに続けていきたいと思います。