料理の仕上げにさっとふりかけるスパイス。私はずっと「七味があれば充分」と思ってきました。香りも味も豊かで、どんな料理も一段と美味しくなる気がして。
けれど、ある日ふと気づいたんです。
「香りが強すぎて、料理の味を邪魔してるかも」と。
それは繊細な出汁の香りを楽しみたいうどんの日でした。七味の香りが主張しすぎて、せっかくの一杯が少しだけ残念な印象に。そこで久しぶりに“一味”を使ってみたら、そのシンプルさに驚きました。
素材の味を邪魔せず、料理の輪郭を引き締める。
40代になって“足す”より“引き算”の美しさに心が向くようになった今、スパイスもまた同じ。ここでは「一味」と「七味」の違いと、私なりの使い分けをご紹介します。
「一味」とは ― シンプルに、ただ“辛み”を添える
一味唐辛子は、唐辛子のみを粉末にしたスパイス。香りの主張が少なく、ただピリッと辛さを加えるだけ。
だからこそ、料理の味そのものを活かしたい時にぴったりなんです。
たとえば:
◎ 出汁の風味が主役のうどんや味噌汁
◎ 鶏の旨みを引き立てたい焼き鳥
◎ あっさり仕上げたい温野菜や鍋物
ほんの少しふるだけで、全体の味がキュッと締まり、食欲も自然とわいてきます。余計な香りを加えず、“辛み”だけが欲しい時の心強い存在です。
「七味」とは ― 香りや奥行きを楽しむブレンドスパイス
七味唐辛子は、唐辛子に加え、山椒・胡麻・青のり・陳皮(みかんの皮)など、七種類の素材をブレンドしたスパイス。
その魅力は、辛さ+香り+コクのバランス感。
たとえば:
◎ 牛すじ煮込みや甘辛炒めなど濃いめの料理
◎ 鍋物や豚汁のアクセント
◎ 納豆や冷ややっこの“ちょい足し”
複数の風味が重なり合って、料理に奥行きが出るのが七味の醍醐味。ただし、料理によっては香りが強すぎて“主張しすぎる”こともあるんですね。
一味か七味か。迷った時の私の選び方
◎ 素材の味を楽しみたい料理 → 一味
例:蕎麦、湯豆腐、野菜スープ、焼き魚
◎ 香りや深みを足したい時 → 七味
例:煮物、炒め物、鍋、ラーメン、焼き肉
季節や体調によっても、使い分けています。
たとえば、寒い日は七味で体をじんわり温め、
食欲がない暑い日は一味のスッとした辛みでリフレッシュ。
体を整えるスパイスとしての魅力
40代から意識したいのが、スパイスの“整え力”です。
唐辛子に含まれるカプサイシンには血行促進、冷え改善、代謝アップの効果が期待されます。七味に含まれる山椒や胡麻には抗酸化作用、消化促進の働きも。
ただし、胃腸が敏感な方は少量から。体と相談しながら、無理のない範囲で取り入れるのが大切です。
スパイスにも“引き算の美しさ”がある
なんでも七味をかければいいと思っていたけれど、実は料理によっては一味のほうが正解なこともある。
スパイスの香りに頼りすぎない。
シンプルな辛みだけがほしいときに、一味がそっと寄り添ってくれる。
そんな視点を持てるようになったのも、40代を迎えて“自分にちょうどいいもの”がわかってきたからかもしれません。
日々の台所に、小さな気づきを。
一味と七味の違いに、ぜひ改めて目を向けてみてくださいね。