40代になると、仕事や家事、家族のお世話などの忙しさに加え、ふとした瞬間に心が疲れてしまうことが増えてきますよね。そんな時、私は自分だけの「感覚の地図」をたどるように、香りや音のやさしい響きに心をゆだねる時間を大切にしています。
日常の中で感じる香りや音は、ただの「刺激」ではなく、私の心と体をそっと包み込んでくれる大切なパートナー。心がざわつくとき、深呼吸とともにふわっと香るラベンダーやベルガモットのアロマに癒されるのは、まるで優しい色彩が私の内側に広がるような感覚です。そして、静かなピアノの音や小鳥のさえずりは、まるで私の心にそっと寄り添うやわらかな光のように感じられます。
こうした「感覚の重なり合い」を意識したセルフケアは、決して難しいことではありません。私の場合は、特別な道具や時間を用意しなくても、日常のささやかな瞬間に取り入れています。たとえば、仕事の合間にデスクでほんの数分、好きな香りを手のひらに取りそっと嗅ぐだけで、気持ちがふっと軽くなることもあります。
また、寝る前にお気に入りのヒーリングミュージックを流しながら、ゆっくりと深呼吸をする時間もおすすめです。音の波が静かに広がっていくのを感じながら、自分の心と体を整える習慣は、40代ならではの「私時間」にとても合っています。
このような感覚のセルフケアは、古代ギリシャ語で「共に感じる」を意味する言葉に由来する「シナスタジア(共感覚)」という概念にも近いもの。感覚が重なり合い、ひとつの刺激が別の感覚を呼び起こすという特別な体験は、誰にでもあるわけではありませんが、日々の暮らしの中で自分の感覚に優しく耳を傾けることで、その心地よさに気づけるのです。
40代は、体や心の変化も感じやすい時期。だからこそ、自分の感覚を大切にする時間を持つことは、心と体のバランスを保つために欠かせません。香りや音を通じて、自分の内側にある「感覚の地図」を丁寧にたどりながら、心の疲れを和らげる。そんなセルフケアを続けていくうちに、暮らし全体が少しずつ整っていくのを感じています。
無理に気持ちを切り替えようとせず、まずは「今の自分の感覚」に寄り添うこと。そこから始まるやさしい時間が、40代からの毎日を豊かに彩ってくれます。