食事の時間を、ただ「お腹を満たすだけの作業」にしていないでしょうか?
私も以前は、仕事や家事に追われながら、慌ただしくごはんを口に運ぶ日が多くありました。
ところが、歳を重ねるうちに、体が発するささやかな声に気づくようになりました。
「疲れがとれにくい」「胃腸の調子が不安定」「食後に急に眠くなる」——
そんな変化の積み重なりが、私に“食べ方を見直す”ヒントをくれたのです。
取り戻したいのは、ゆるやかな自己尊重の時間。
その入り口として、私は「よく噛む」ことを改めて意識し始めました。
咀嚼とは、身体と心をつなぐ習慣
咀嚼(そしゃく)─ただ食べ物を噛む行為ではありません。
噛むことで唾液がしっかり分泌され、消化を助けるのはもちろん、体と心に穏やかな変化をもたらします。
このシンプルな習慣は、特別な器具や余分な時間を必要としないセルフケア。
むしろ、日々の暮らしの中でこそ輝く、“整える”ための小さな灯火なのだと思います。
よく噛むことがくれる、7つのやさしい変化
私自身が実感した、よく噛むことによる変化をお伝えします。
① 満腹感が早く訪れ、食べ過ぎにブレーキ
ゆっくり噛むことで満腹中枢が刺激され、自然に食べる量を抑えられるようになりました。
② 素材の深みを感じる味覚への目覚め
お米や野菜、出汁の風味がじわりと広がり、食事が一層豊かに感じられるようになります。
③ 消化がスムーズに。胃腸の負担軽減
唾液中の酵素がしっかり働くと、消化が助けられ、食後のもたつきや重さが和らぎました。
④ 脳への刺激、集中力のサポート
咀嚼は脳を活性化するとも言われ、記憶力や集中力の維持に寄与しうる習慣です。
⑤ 口腔環境の自然なケア
唾液の力で、口の中を清潔に保ちやすくなる。口臭予防や虫歯リスクの軽減にも。
⑥ フェイスライン・表情筋の引き締め
よく噛む動きが顔の筋肉を使い、たるみの予防やリフトアップにも繋がる可能性があります。
⑦ ストレス軽減、心にゆとりを
噛むことで副交感神経が刺激され、リラックス効果が得られる。呼吸とともにゆったり噛む時間は、心を整えるひとときです。
私が“よく噛む”を習慣化して感じた変化
かつての私は、時間に追われながら、噛む回数など考えずに食事を済ませていました。
それが、一口につき20〜30回を意識するようになって、暮らしが少しずつ変化していきました。
◎ 満足感の持続で間食が減り、体が軽くなった
◎ 食後の眠気が軽くなり、午後の集中力が向上した
◎ 肌の調子が安定しやすくなった
◎ 「食べること」を味わう時間が、心のゆとりになる
特に玄米や雑穀ごはんは、よく噛むほどに甘みが際立ち、ごはんを食べること自体が喜びになりました。
今日からできる、咀嚼を育てるコツ
「一口30回なんて現実的じゃない」と思う日もありましたが、次のような工夫で無理なく増やすことができました。
◎ 固めの食材(ごぼう・れんこん・雑穀米など)を意識して取り入れる
◎ ひと口の量を控えめに盛る
◎ 食事中はスマホやテレビを遠ざけ、“食べること”だけに意識を向ける
これらは特別なことではなく、むしろ丁寧さを取り戻すための心がけ。
よく噛む時間が、忙しさの中で自分を抱きしめる時間になってくれるのです。
「よく噛む」は、自分を整える静かな時間
高価な美容法や話題の健康法を追うよりも、
まずは身近な「よく噛む習慣」から自分をいたわる時間を取り戻したい。
ただ食べるだけでなく、噛むたびに味わい、感じる─
そんな食べ方の積み重ねこそ、心と体をゆるやかに整えていく力になると思います。
40代からの食べ方は、“なにを食べるか”と同じくらい、“どう食べるか”が大切。
今日から始める“咀嚼習慣”が、あなたの暮らしにもそっと寄り添ってくれますように。

