今日は、少しだけ過去の話をさせてください。
2年前、私は“緑内障”という診断を受けました。
突然の病名に、心がふわりと浮き上がるような感覚。
頭では理解しているのに、気持ちはついていかない。
医師からは点眼薬での治療を勧められましたが、なぜか踏み切れませんでした。
“本当にもう始めてしまっていいのだろうか?”
そう思いながらも、その不安や迷いの理由すら、自分でうまく掴めていなかった気がします。
そんなある日、私は思い切って鍼灸院を訪れました。
誰かに頼りたかったのか、別の角度から体を見てみたかったのか―
ただ、どこかで“自分の道を探していた”のだと思います。
鍼灸の先生の一言で、止まっていた思考が動き出した
初めて施術を受けた日のことは、今でも鮮明に覚えています。
問診票を書き、緊張しながら状況を話す私に、先生は静かに問いかけました。
「あなたは、どうしたいですか?」
その一言で、胸の奥がきゅっとつかまれたような気がしました。
まるで止まっていた時計の針が、ゆっくりと動き出したような感覚。
私はこれまでずっと、
「何が正しいのか」
「どうすべきか」
「周りはどうしているのか」
そんな“正解らしきもの”ばかりを探し続けていました。
でも、先生の問いかけで気づいたのです。
“私はどうしたいか”を一度も、自分に聞いたことがなかったということに。
正解を探し続けていた20代・30代
思い返せば、20代も30代も、私はずっと“正解探し”の中にいました。
・誰も困らせない選択
・安心される行動
・失敗の少ない道
・評価される生き方
それらを選び続けるのが「正しい」と信じていました。
だからこそ、緑内障と診断されたときも、
“薬を使うことが正解”
“治療を始めるべき”
そんな空気に流されそうになっていたのだと思います。
でも、その時の私は、
本当の気持ちを一度も見ていなかった。
それに気づいた瞬間、ふっと心が緩みました。
40代になり、ようやく自分の声を聞けるようになった
先生の一言を境に、私は自分の気持ちとゆっくり向き合うようになりました。
「怖い」
「不安がある」
「薬に抵抗がある」
「まずは自分の体を知りたい」
そのどれもが、誰かの正解ではなく、
“私自身の本音”でした。
本音に触れたとき、
“自分を大切にする”とは、
特別なことをするのではなく、自分の声を無視しないことなのだと気づきました。
「自分がどうしたいか」が人生の方向を決めていく
誰かに決めてもらった選択は、安心をくれるけれど、
深い納得まではくれません。
反対に、自分で選んだ道は、たとえ遠回りに見えても、
必ず自分を前に進ませてくれる。
40代の今は、それがよく分かります。
あの日の問いかけは、病気の治療だけでなく、
生き方そのものを見直すきっかけになりました。
“私はどうしたい?”
この問いは、今も私の毎日の方向をそっと整えてくれる、静かなコンパスです。
自分の声を取り戻すと、人生は静かに軽くなる
誰かに合わせた答えでも、
期待に沿う行動でもなく、
“自分がどうしたいか”を選んでいい。
そう思えるようになると、人生は静かに、でも確実に軽くなります。
40代は、自分の心に正直でいたい。
そんなふうに、生き方を少しずつ見直している今日この頃です。
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