40代に入ると、これまでなら気に留めなかった小さなことにも、心が揺れやすくなったと感じる日が増えました。
家族の予定、仕事の段取り、人間関係の距離感。
どれも大切だからこそ、“ちゃんとしなくては”という気持ちが強くなり、些細なズレがやけに気になってしまうこともあります。
ある日、ふと気づきました。
―私は、暮らしの“細部”ばかり整えようとしていたのではないか、と。
木造建築(軸組工法)には、建物を支えるための構造部材がいくつもあります。
重要度の順に並べると、
◎ 基礎:建物全体の荷重を地盤に伝える最基盤。耐震性の起点です。
◎ 柱(通し柱・管柱):垂直荷重を基礎に伝え、建物の骨格を形成。
◎ 梁・桁:柱間を繋ぎ、水平荷重を分散・固定。
◎ 筋交い:柱・梁の変形を防ぎ、横力(地震や風)に耐える補強。
◎ 間柱:壁を支える小柱で、耐力壁を補助。
◎ 火打梁:柱の座屈防止と横ブレース。
建物を支えているのは、基礎・通し柱・梁などの主要構造です。
間柱や火打梁、床束や垂木などの部材は補強役で、少しのズレがあっても家は倒れません。
暮らしや心も、これと同じではないでしょうか。
私は長いあいだ、
● 散らかった部屋
● 人のちょっとした言葉
● 思い通りに進まない段取り
● 家族の機嫌
● 自分の小さな失敗
―こうした“間柱の揺れ”に振り回されていました。
でも本当に大切なのは、自分の心を支える“通し柱”や“土台”です。
この軸がしっかりしていれば、細かい揺れに敏感になる必要はありません。
では、私の“通し柱”は何か。静かな朝に書き出してみました。
◎ ゆっくり眠る
◎ 心地よく食べる
◎ ひとりの時間を確保する
◎ 無理な約束はしない
◎ 距離を保つ勇気を持つ
◎ 心が疲れたら立ち止まる
どれも当たり前のことなのに、つい後回しにしていました。
裏を返せば、これこそが私の心を支える主要構造――通し柱だったのです。
この気づきは、人間関係にもやさしく作用しました。
誰かの言葉や態度の揺れは、家の壁がきしむ音のようなもの。
その関係にある“土台”―信頼・尊重・安心感・距離感―がしっかりしていれば、簡単には倒れません。
40代は、家でいう“経年変化”の時期かもしれません。
無理に新品のように保とうとしなくていい。
木造の家がゆっくりと馴染み、味わいを深めていくように、私たちも暮らしの中で少しずつ調和を取り戻していけばよいのです。
◎ 細部より軸。
◎ 間柱より通し柱。
◎ 揺れに振り回されるより、自分の土台を整える。
今日、もし心が揺れているなら、どうか“あなたの通し柱”に手を添えてあげてください。
40代の暮らしはまだまだこれから。
何度でも建て直しながら、心地よい私時間を育てていけます。

