40代になってから、
私は気づかないうちに、
自分にだけ少し厳しくなっていました。
人には「無理しなくていいよ」と言えるのに、
自分には「まだ足りない」「もっとできたはず」と、
小さなダメ出しを重ねてしまう。
そんな無意識の癖に、
ある日ふと、立ち止まるきっかけをくれたのが
八犬伝の徳目、「仁」でした。
八犬伝における「仁」とは何か
八犬伝における「仁」は、
思いやりや慈しみの心を表す徳です。
犬塚信乃が宿すこの徳は、
誰かを守るための強さであると同時に、
相手の痛みを想像する、やわらかさでもあります。
ただ正しくあろうとするのではなく、
命や心に向き合う姿勢そのもの。
それが「仁」なのだと、今の私は受け取っています。
40代になって増えた“無意識の自己否定”
40代になると、
体調や気力に波が出てきます。
若い頃と同じようにできない日があると、
私はどこかで
「ちゃんと管理できていない自分」を
責めていました。
休むことに理由を探し、
調子が出ないことに意味づけをしてしまう。
でも本当は、
それは怠けでも甘えでもなく、
今の体と心の自然なリズムだったのだと思います。
私が「人に向けていた優しさ」を自分に向けた日
ある日、
疲れている自分に対して、
いつものように心の中で
ダメ出しをしそうになった瞬間がありました。
そのとき、
もしこれが大切な人だったら、
私は何と言うだろう、と考えたのです。
きっと
「今日はここまででいいよ」
「よくやってるよ」
そう声をかけるはずでした。
その言葉を、
初めて自分に向けてみた日。
不思議と、呼吸が深くなったのを覚えています。
仁は「甘やかし」ではなく「回復力」
自分にやさしくすることは、
何もしないことではありません。
仁の本質は、
放っておくことではなく、
回復できる状態を守ること。
責め続ければ、心は縮こまり、
力は出なくなります。
でも、やさしさがあると、
人はまた自然に動き出せる。
40代の暮らしに必要なのは、
自分を奮い立たせる言葉よりも、
立て直せる余白なのだと思います。
40代の私時間は、まず自分を守ることから
誰かを大切にするためにも、
暮らしを整えるためにも、
まず必要なのは、
自分を消耗させないこと。
仁は、
「人のための徳」であると同時に、
「自分を守るための徳」でもあります。
40代からの私時間は、
がんばり続ける時間ではなく、
回復しながら進む時間。
自分にもやさしくすることを、
少しずつ、暮らしの中に
許していきたいと思います。
まとめにかえて
仁は、
立派で完璧な人になるための教えではなく、
今日を無事に終えるための視点。
自分を責めない選択は、
弱さではなく、知恵。
物語の中の徳が、
静かに、今の暮らしに触れる。
そんな時間を、
これから少しずつ重ねていけたらと思います。
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