物語の徳を、暮らしへ。八つの徳で整える、40代からの私時間:第7回|孝(こう)× 犬江親兵「つながりを大切にする」

②【生き方・考え方】

40代になってから、
「優しさとは何だろう」と考えることが増えました。

特に、家族との関係において。

若い頃は、
我慢すること、合わせること、耐えることが
そのまま優しさだと思っていました。

でも今は、
それだけでは心が持たないことも、
少しずつ分かってきました。

そんなときに思い浮かんだのが、
八犬伝の徳目のひとつ、「孝」でした。

孝=犠牲ではない

「孝」と聞くと、
親のために尽くすこと、
自分を後回しにすること、
というイメージが浮かびがちです。

犬江親兵衛が体現する孝も、
一見すると強く、献身的な徳に見えます。

けれど物語を読み返してみると、
そこには自己犠牲の美化ではなく、
つながりを大切にし続ける意思があるように感じました。

無理をして壊れてしまっては、
孝は続かない。

孝とは、
自分を削り続けることではなく、
関係を絶やさないための選択なのかもしれません。

頑張りすぎていた家族との関係

40代に入るまで、
私は家族に対して「ちゃんとしなければ」と
思いすぎていたように思います。

期待に応えようとする。
波風を立てないようにする。
自分の本音は、後回しにする。

それが当たり前になっているうちに、
優しさと疲れが、区別できなくなっていました。

会ったあとに、どっと消耗する。
話したはずなのに、気持ちは伝わっていない。

そんな感覚が増えたとき、
私は初めて立ち止まりました。

私なりの孝のかたち

そこから少しずつ、
「全部を引き受けない」選択をするようになりました。

すぐに返事をしない。
無理な頼みは、正直に断る。
自分の体調や気分を、基準に入れる。

最初は、
冷たくなったのではないかと不安でした。

でも、続けていくうちに気づいたのです。

無理をしているときよりも、
余裕のあるときのほうが、
穏やかに関われていることに。

それが、今の私なりの孝のかたちです。

距離が心を守ることもある

「近くにいること」だけが、
つながりではありません。

物理的にも、心理的にも、
少し距離を取ることで守られる関係もあります。

距離を取ることは、拒絶ではなく、
関係を長く保つための調整。

犬江親兵衛の孝も、
常に寄り添うことではなく、
状況を見極めながら行動する姿に、
深さを感じます。

40代の孝は、
感情に流されない冷静さと、
自分を守る優しさを含んでいい。

そう思えるようになりました。

孝は続けられる形で

孝は、一度きりの行為ではありません。
長い時間をかけて、続いていくもの。

だからこそ、
無理を前提にしないことが大切なのだと思います。

・自分をすり減らさない
・罪悪感だけで動かない
・できる範囲で、誠実でいる

それだけで、十分。

八犬伝の「孝」が教えてくれるのは、
立派な振る舞いではなく、
関係を続けるための知恵

40代からの私時間は、
誰かのために自分を失う時間ではなく、
自分を守りながら、つながりを選ぶ時間でありたい。

それが、
今の私が受け取った「孝」のかたちです。

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