「ひとり暮らし高齢者」の現実と、40代の私たちが今からできる備え
ある日、親からの電話で「最近、階段が少しきつくてね」と聞いたとき、
胸の奥に小さな不安が灯る―そんな経験はありませんか?
高齢の親が地方や離れて暮らしている場合、
いざ介護が必要になったときに何から手をつけていいのか分からない、という声が増えています。
特に今、日本では一人暮らし高齢者が過去最多。
厚労省の調査によると、65歳以上の約6人に1人が「ひとり暮らし」です。
「介護をする家族がいない」「施設の空きがない」「費用が高い」という三重苦の中、
本人だけでなく、40代・50代の子世代にも静かな“介護の現実”が迫っています。
特養(特別養護老人ホーム)入居待ちの現実
「いざとなったら特養に入ればいい」と思っていたら、実は待機期間が数年というケースも少なくありません。
特養は公的な施設で費用が比較的安く、要介護3以上の方が対象。
ですが、全国で数十万人が入居を待っている状況です。
都市部では入居待ちが長期化し、地方ではそもそも施設数が少ないという「地域差」も顕著。
介護度や収入、地域によっては月額15〜20万円程度の負担が必要な場合もあります。
この現実を知ると、「自分の親や、将来の自分はどう備えればいいのか」という不安がよぎります。
在宅介護という選択肢─支える人がいない時代に
家で過ごすことを望む高齢者は多いですが、
独居での在宅介護には、「通院」「買い物」「見守り」の3つの壁があります。
特に、地方では介護タクシーや訪問介護の担い手が不足しており、
支援を受けたくても「人がいない」「順番待ち」というケースが現実に起きています。
そのため最近は、地域包括支援センターや見守りサービスを早めに登録しておく人が増えています。
行政や民間の見守りサービスを上手に活用し、「孤立しない暮らし」を整えることが鍵になります。
費用の壁と、“いざという時”の備え方
介護費用は、介護度や利用サービスによって異なりますが、
在宅介護でも月5〜10万円前後が目安といわれます。
「介護保険でまかなえる」と思っていても、実際には
・生活費
・医療費
・福祉用具(ベッドや車椅子など)
など、自己負担分が積み重なっていきます。
もし親が年金のみの収入であれば、家族が補う部分も出てきます。
40代のうちから、家計と老後資金を一緒に見直しておくことが大切です。
今からできる3つの“整える行動”
① 親の住まいと地域サービスを確認する
親が暮らす自治体の「地域包括支援センター」や「介護保険課」に相談し、使える制度を把握。
② 見守り・緊急通報サービスを登録しておく
月数千円で利用できる民間見守りサービスもあります。
“安心の目”を増やすことが、離れて暮らす家族の支えになります。
③ 「自分の介護」も同時に考える
介護は突然やってくるもの。
今から、老後の住まいや医療・介護体制を調べておくことが、「自分を守る準備」になります。
“支える”から“整える”へ。
かつての日本では「家族が介護するのが当たり前」でした。
でも今は、「無理をせず、続けられる支え方」を選ぶ時代。
介護を「誰がするか」ではなく、
「どう支え合えるか」という視点で見直すことが、
これからの私たち世代にとっての“現実的な優しさ”だと思います。
親を思う気持ちと、自分の人生を守る気持ち。
どちらも大切にしながら、穏やかに整える暮らしを続けていきたいですね。
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