見えない“気”を届けた日 ― 鍼灸師の先生へ、私のレイキヒーリング体験先生の「気配」に感じた、ほんの小さな違和感

日常のエピソード

「今日はいかがですか?」
鍼灸院で先生に呼ばれ、いつものように施術室に入ったとき、ふと胸に引っかかるものがありました。言葉ではうまく説明できないのですが、先生の様子がどこか少し違って見えたのです。

たとえば空気の層がゆるやかに停滞しているような、いつもの軽やかさが消えているような……。体調そのものではなく、「気」の巡りに滞りを感じるような、そんな感覚でした。

子どものころから続く、手を添えるという習慣

私には昔から、人に“手を添える”習慣があります。

小さな頃から母の肩をもんで「ありがとう」と言われるのが嬉しくて、マッサージは自然と私の日常になっていました。誰かの身体にやさしく触れること、相手の様子を静かに観察することは、私にとって“呼吸を整える”ような意味があるのかもしれません。

そんな私が20代後半に出会ったのが、レイキヒーリングでした。愛犬の病気をきっかけに、「何かできることはないか」と探す中でたどり着いたのが、目に見えないけれど確かに“気”を整える、このやさしい手当ての技法でした。

レイキは日本発祥。でも、なぜ日本で知られていないの?

レイキヒーリングは、日本の京都で臼井甕男(うすいみかお)先生によって体系化された伝統的なヒーリング法です。しかし戦後、GHQの影響で国内では一時期その実践が難しくなり、日本人の私たちにとってはあまり馴染みのないものになってしまいました。

不思議なことに、いまこのレイキは欧米の医療・セルフケア分野で“Reiki”として広く取り入れられています。以前、私のレイキの先生が「日本人なのに、なんでレイキを知らないの?」とイタリア人のアスリートに驚かれたという話をしてくれました。かえって海外のほうが、このエネルギーケアの価値を素直に受け入れているようにも感じます。

小さなお返しとして、レイキを手向ける

施術のあと、私は静かに先生に声をかけました。

「先生、もしよかったら……今日は少しだけ、レイキをさせていただけますか?」

鍼灸もレイキも、“気”の流れを整えるという意味では通じるところがあります。先生は少し驚きながらも、「面白いですね。お願いします」と言ってくださり、私は手をそっと先生の首に手を添えました。

私は人の体の周りにある“空気の層”のようなものを、色で感じることがあります。そのときの先生のまわりには、どこか重く、くすんだようなグレーの気配がありました。

でも、手を添えたその数分の間に、その層が少しずつ薄まり、やわらかく、あたたかく変わっていくのを感じました。

エネルギーは、言葉よりも深く届く

レイキを終えると、先生は少し驚いたような表情で、「あれ、不思議と肩が軽くなった気がします」と静かに笑ってくださいました。

私はその表情を見て、なんだか嬉しくなりました。

「このあと、往診ですよね。どうかお気をつけて。いつもありがとうございます」

見えないけれど、たしかにそこにある“気のやりとり”。それを丁寧に感じ取れる時間があることは、今の私にとって、とても大切な宝物です。

誰かの体と心に、そっと手を添える。それが私なりの「整える」ということかもしれません。

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