40代になってから、「日々を整える」とはどういうことだろうと考えるようになりました。
特別なことではなく、毎日の中にある“ささやかなこと”の中に、
私たちの心や暮らしを整えるヒントがあるのかもしれません。
そんなとき、ふと出会ったのが、中世ヨーロッパの修道女たちの暮らし。
祈りと静けさに包まれた修道院で、彼女たちは自分たちの手でハーブを育て、
薬草や生活に役立つ植物の知識を受け継いできたといいます。
その中で心に残ったのが、サボンソウとラベンダーという二つの植物にまつわる話でした。
サボンソウ ― 泡立つ“石けん草”で、やさしく洗う
「サボンソウ」は、“石けんの草”という意味の植物。
修道院では、このサボンソウの根や葉を煮出して泡立てることで、
衣類やリネンをやさしく洗う天然の石けん液として使われていたそうです。
水や資源が限られていた時代。
修道女たちは、自然の恵みを最大限に活かして清潔を保っていたのです。
サボンソウの泡は刺激が少なく、
繊細な布や古いリネン、赤ちゃんの肌着などにも適しているといわれています。
ただ、現代の私たちが日常で使うには少しハードルが高いのも事実。
ハーブの根を煮出す工程や、材料の入手の難しさもあります。
私もまだ実際に試したことはありませんが、
「こんな選択肢もある」と知っているだけで、
自然と調和した暮らし方に、少し気持ちが近づけたような気がします。
ラベンダー ― 修道院に広がる“聖なる香り”
もうひとつ、修道女たちに愛されていたのがラベンダーです。
リネンの香りづけや防虫、心を落ち着かせる薬草として、
修道院のあちこちに植えられていたラベンダーは、
「修道女のカーテン」「聖なる香り」とも呼ばれていたそうです。
清潔であることは、衛生だけでなく、心を整える大切な要素。
ラベンダーの香りには、空間を整える力があったのかもしれません。
私も、ラベンダー精油は長く愛用しています。
掃除後の仕上げにふんわり香りを漂わせたり、
リネン類に数滴なじませて深呼吸したりするだけで、
心がすっと静かになる瞬間があります。
ラベンダーの精油は、リラックス・防虫・除菌と多用途で、
「心地よい暮らし」に寄り添ってくれる心強い存在です。
昔の知恵に、今の私たちができることを重ねて
サボンソウもラベンダーも、華やかな存在ではありません。
でも、どちらも自然と共に生きる知恵として、長く大切にされてきた植物です。
サボンソウは、やさしい泡で布をいたわる“いつか使ってみたい”憧れの知恵。
ラベンダーは、香りを通してすぐに暮らしに取り入れられる、頼れるパートナー。
完璧を求めず、「できることを、できる範囲で」。
40代の今の私にとっては、それが何より大事だと感じています。
洗濯もまた、心を整える時間のひとつ。
ただの家事ではなく、“自分の暮らしをやさしく整える”小さな儀式だと思えるようになりました。
中世の修道院で紡がれてきた、静かで実直な知恵たち。
そんな物語にそっと触れることで、
今の私たちの暮らしにも、小さな安らぎが届くような気がしています。