忙しさが続いたり、気づかぬうちに疲れがたまっていたり。
そんなとき、私は必ず向かう場所があります。
東京から電車でおよそ1時間。観光地としては有名ではないけれど、風と水と静けさが心地よく調和した、私にとっての“心を整える場所”です。
この土地に初めて出会ったのは11年前。ふらっと訪れたその瞬間、不思議なくらい体の奥から力が抜けていく感覚を覚えました。澄んだ空気と木々のゆらめき、やわらかな風に包まれて、心がほどけていく——それ以来、ここは私の“リセットボタン”のような存在になりました。
40代、自分の「整え方」を知り始めた
40代になって、自分の心と体のちょっとした変化に敏感になりました。若い頃のように勢いだけでは乗り越えられない日もあって、やる気が出なかったり、気持ちが沈んだりすることも。
そんなときは、自然の中へ行って風を感じる時間をつくるようにしています。木々がそよぐ音、水が流れる音、肌に触れるやさしい風。何かを“する”のではなく、ただその場に“いる”だけで、心と体がゆるやかにほどけていくのを感じます。
音や情報があふれる毎日では味わえない、“静かな豊かさ”がそこにはあります。
「住む場所」ではなく、「帰る場所」だったという気づき
この場所に通ううちに、「ここに住みたい」と思うようになったこともあります。自然に囲まれた暮らしは、岡山出身の私にとって馴染み深く、東京の生活では得られない安心感がありました。
4年前、本格的に土地探しを始めました。でも現実は理想通りにはいかず、なかなか思うような土地に出会えませんでした。自然が豊かだからこそ、住宅地に適した場所が限られていたのです。
そんななかで、ふと気づいたことがあります。
「この場所は、住む場所じゃなくて“帰る場所”でいいんじゃないか」
日常になると、風景も“当たり前”になってしまう。でも、たまに訪れるからこそ、五感がひらき、心が整う。そのことに気づいてから、無理に形にしようとせず、今のままこの場所と向き合っていくことにしました。
自然とつながる、シンプルな過ごし方
この場所で過ごすとき、特別なことは何もしません。
朝の風を感じながら散歩し、水の音を聞きながらぼんやりと座る。スマートフォンはバッグにしまって、音楽も流さず、ただ自然の音と一緒にいる時間。
「整える」って、何かを足すことじゃなくて、引いていくこと。
余計なものがそぎ落とされていくと、自分にとって本当に大切なものが、そっと浮かび上がってきます。
暮らし方も、向き合い方も変わっていくからこそ
40代になって、暮らしとの向き合い方にも変化がありました。
かつて「理想の暮らし」と思っていた形が、今は「癒しに立ち返る場所」へと変わっていく。その変化を自然に受け入れられるようになった今、より深くその場所を好きになれた気がします。
風を感じること。自然とつながること。
それは、これからの私にとって大切にしていきたい“整える習慣”のひとつです。