「私時間の旅」世界のお弁当文化にふれる─40代からの暮らしに、各国の“持ち運ぶごはん”を重ねて

食について

日々の暮らしの中で、私たちの心と体をやさしく満たしてくれる存在、それが「お弁当」です。忙しい日でも、そっとふたを開けるとホッとする小さな箱には、自分を大切にする気持ちが詰まっています。

実は、この「お弁当」という文化は日本だけのものではありません。世界には、その土地の気候や暮らし方、食文化がぎゅっと詰まった“持ち運ぶごはん”が存在します。今回はそんな世界のお弁当文化をめぐりながら、40代からの丁寧で心地よい暮らしに思いを馳せてみましょう。

日本:彩りと心を詰める「お弁当」

日本のお弁当は色彩豊かで、栄養バランスを考えた多彩なおかずが詰められています。玉子焼きや焼き魚、旬の野菜のおひたしなど、素材の味を活かしたやさしい味わいが魅力です。

最近ではキャラクターをかたどった「キャラ弁」や、旅先で楽しめる「駅弁」、また忙しい現代人の味方「作り置き弁当」も人気に。日本の「BENTO」は海外でも親しまれ、機能的な弁当箱のデザインも注目されています。日々の暮らしに心地よさと彩りを添える存在です。

インド:家族の味を職場へ届ける「ティフィン」

インドのムンバイでよく見かける「ティフィン」は、段重ねのステンレス製お弁当箱。ご飯やカレー、複数のおかずが混ざらない工夫がされており、家庭の味をそのまま届ける役割を担っています。

さらに、「ダッバーワーラー」と呼ばれる配達人が、家で作られたお弁当を職場へ届け、食べ終わった容器を回収するシステムは100年以上続いています。配達ミスほぼゼロという信頼の仕組みは、暮らしと人のつながりの美しさを象徴しています。

タイ:重ねる美しさ「ピントー」

タイの「ピントー」は木製やプラスチック製の段重ねランチ容器で、16〜17世紀に日本の「提重(さげじゅう)」から伝わったとも言われています。地域の食文化を日常に取り入れる生活の知恵が今も生きています。

ブータン:自然と調和する「ポンチュー」

ブータンでは竹で編んだ二重構造のかご型弁当容器「ポンチュー」が使われます。通気性が良く軽いので持ち運びに便利で、食べるときは手で丸めていただく習慣も。自然素材と共に暮らすシンプルな暮らしの心地よさが感じられます。

アメリカ:シンプルな自由「ブラウンバッグ」

アメリカのお弁当は紙袋に入れたサンドイッチや果物、スナックを持ち歩く「ブラウンバッグ」が定番。私が留学していた頃は、茶色の紙袋に入ったターキーのサンドイッチと小さなリンゴが日々のランチでした。飾り気はなくても、慌ただしい学生生活の中でほっと一息つける「私時間」でした。

最近では仕切り付きの「ランチャブルズ」や、日本のような機能的でオシャレなランチボックスも注目されています。シンプルさの中にも楽しさを見つけるアメリカの文化は、心地よい暮らしのヒントになりそうです。

ヨーロッパ:パンが主役の軽やかなランチ

フランスではバゲットにチーズやハムをはさんだサンドイッチ、イギリスでもパンを使った軽食が主流。お弁当箱はシンプルで使い捨てが多いものの、最近は環境に配慮した再利用可能な容器も増えてきました。

“食べる時間”をもっと愛おしく

世界のお弁当文化は、それぞれの土地の暮らし方や食の知恵が凝縮された、かけがえのない生活の一部です。彩りを大切にする日本、家庭の味を届け合うインド、自然と調和するブータン、そしてシンプルな自由を楽しむアメリカ。どの文化も、「誰かのために用意する」「自分を整える」という優しい心が宿っています。

40代の私たちが忙しい日々にふと立ち止まりたいとき、そんなお弁当のように少し丁寧な時間を作ることで、心と体を整えることができるのかもしれません。

これからも世界の暮らしの知恵を借りながら、心地よい「私時間」を育んでいきたいですね。

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