ある日、スーパーへ向かう坂道で、小さな出会いがありました。
それは、杖をついた年配の男性と、その隣を歩くベージュ色の小さなトイプードル。
何気ない日常の一場面に、静かで深いやさしさを感じた瞬間でした。
40代になって、こうした“心がふれる”できごとが、より豊かに感じられるようになった気がします。
杖をついた男性と、寄り添う犬
いつものスーパーへ向かう途中、坂道をゆっくりと歩く年配の男性と、その足元を気遣うように歩くトイプードルに出会いました。
男性は杖をつき、歩くのが少し大変そう。それでも、犬はその歩幅に合わせるように、決して先に行こうとはせず、常に飼い主の方を気にかけている様子でした。
その姿がとても印象的で、つい足を止めて見守ってしまいました。
スーパーの入り口に残されたトイプードル
男性はスーパーの入口近くの駐輪場の柵に、犬のリードを巻きつけました。
私はその後ろから店内へ入り、買い物をすませ、ふたたび外に出たとき、ふと視線を感じて顔を上げると、まだその場所にトイプードルがいました。
近づくと、小さな声で「キュンキュン」と泣いています。
でも、それは分離不安のような鳴き方ではありません。
手を差し出すと、匂いを嗅ぎに来て、ほんの少しだけ静かになり、また、スーパーの入り口をじっと見つめながら「キュンキュン」と鳴き出しました。
その瞳には、不安よりも“心配”がにじんでいるように見えました。
「飼い主さん、ちゃんと出てこられるかな?」と、じっと待っている。
その姿に、胸が熱くなりました。
思いやりは、言葉よりも深く伝わる
犬は言葉を話さないけれど、行動で、態度で、たくさんのことを伝えてくれます。
この日出会ったトイプードルは、飼い主の足のことを理解し、気づかい、じっと待ち続けていたように思います。
そしてその様子は、人が見せるどんな優しさよりも、まっすぐに心に届くものでした。
日々の暮らしの中で、こうした一瞬にふれると、心がふっと柔らかくなります。
あわただしい毎日でも、立ち止まってみることで、小さな気づきや感動がある。
40代になった今だからこそ、こうした“心の深呼吸”のような出来事を、大切に感じたいと思いました。