40代に入ると、気候の変化やストレス、生活のリズムの揺れを、以前よりダイレクトに感じるようになりました。
「足先が冷えてつらいのに、顔だけほてる」「夜になると頭が熱くて眠れない」—こうした“冷え”と“のぼせ”が同時に起こる不調は、私自身も経験してきたものです。
そんなとき、支えになったのが薬膳の基本にある「陰陽」の考え方でした。
むずかしい理論のように見えますが、実は、毎日の食を通して自分の体と向き合うための、とてもシンプルでやさしい道しるべなのです。
陰陽とは「体の今」を読み取るための知恵
薬膳における陰陽とは、
◎ 陰=冷やす・潤す
◎ 陽=温める・巡らせる
という性質を表したもの。
体のサインを陰陽で見ていくと、40代から感じやすい不調がわかりやすくなります。
〈陰に傾いたときのサイン〉
・手足が冷える
・疲れやすい
・温かい飲み物を欲する
・顔色が白っぽい
〈陽が強いときのサイン〉
・のぼせる
・顔が赤くなりやすい
・イライラしやすい
・熱っぽさを感じる
バランスが乱れる原因のひとつには、40代以降におとずれるホルモン変化があります。
特に、下半身は冷えているのに上半身だけ熱を持つ——いわゆる“冷えのぼせ”は、陰陽の偏りが起きている代表的なサインです。
40代女性に多い「冷えのぼせ」をやさしく整える
“冷えのぼせ”状態のときは、
◎ 体の芯を温める(陽を補う)
◎ こもった熱を逃す(余分な陽を散らす)
という両方が必要です。
そのために役立つのが、食材の「陰=冷ます」「陽=温める」という性質。
難しく考える必要はなく、身近な食材で十分に整えられます。
陰陽で選ぶ、冷え・のぼせのセルフケア食材
◎ 陽の食材(体を温める)
生姜、ネギ、にら、にんにく、ごぼう、シナモン など
→ 手足の冷え・疲れ・元気不足に。
◎ 陰の食材(体の熱を冷ます)
トマト、きゅうり、豆腐、なす、梨、緑茶 など
→ のぼせ・ほてり・イライラの日に。
とはいえ、「陰を摂ってはいけない」「陽だけを増やせばいい」というわけではありません。
冷えのぼせの日は、基本は“陽を中心にしながら、ほてりが強ければ少し陰で調整する”、このバランスが大切です。
たとえば、
・朝は生姜入り味噌汁でぽかぽかに
・昼にほてる日はトマトや豆腐を少しプラス
・夜はネギやニラで体を温めて眠りやすくする
そんなやさしい取り入れ方で十分、体は応えてくれます。
陽を補う簡単レシピ
にら・ネギ・生姜の“巡りを整える”卵スープ
忙しい日でもパッと作れて、体の芯からゆるんでいくような一杯です。
【材料】
・ニラ ひとつかみ
・ネギ 1/2本
・生姜スライス 2〜3枚
・卵 1個
・だしまたは鶏ガラスープ 350ml
・塩、醤油少々
・ごま油 少し
【作り方】
① 鍋にスープと生姜を入れ、弱火で温める。
② 斜め切りにしたネギとざく切りのニラを入れて、軽く煮る。
③ 溶き卵を流し入れ、ふんわり固まったら味を整える。
④ 最後にごま油をひとまわし。香りが立ち、体がすっと緩むような味わいに。
生姜・ネギ・ニラの組み合わせは、冷えや巡りの滞りをやさしくサポート。
夜の一杯としても、朝のウォーミングアップとしてもおすすめです。
陰陽を知ると、“私の体がわかるようになる”
薬膳の魅力は、自分の体を責めたり無理をしたりするのではなく、
「今日はちょっと陰が強いな」「最近、陽が上がりやすいな」
と、体の声に気づくきっかけをくれるところにあります。
40代は、体が変化していく時期。
その変化を“しんどい”で終わらせず、
“私に必要なケアを知るチャンス”に変えられるのが薬膳の良さです。
今日はどちらに傾いている?
そんな小さな問いかけを続けていくことで、
食事があなたの暮らしにやさしく寄り添う力になってくれます。
【関連記事】
▷ 第1回:薬膳の基本を知る ― 40代からの“体を整える食”入門
▷ 第2回:陰陽のバランスを整える ― “冷え”と“のぼせ”を見極める
▷ 第3回:五性・五味で知る、食材のチカラ

