40代になってから、
料理に「効率」だけを求めなくなりました。
早く終わらせるより、
自分の感覚が戻ってくること。
そのきっかけになったのが、
スパイスを挽く時間です。
ホールスパイスをミルに入れ、
くるくると回す。
それだけの動作なのに、
立ち上がる香りで、呼吸が変わる。
スパイスを挽くことは、
料理の下準備であると同時に、
自分を整える前段階のように感じています。
スパイスは「挽いた瞬間」がいちばん香る
スパイスの香りは、
粉になった瞬間から、少しずつ逃げていきます。
市販のパウダーが悪いわけではありません。
ただ、香りのピークはすでに過ぎている。
ホールスパイスを挽くと、
眠っていた精油成分が一気に立ち上がり、
台所の空気が変わります。
・胡椒
・クミン
・コリアンダー
・フェンネル
どれも、
挽きたては驚くほどやさしく、立体的な香り。
「強い」のではなく、
澄んでいる。
40代の体が心地よく感じるのは、
この“刺激の少ない鮮度”なのだと思います。
家庭でできる、基本の挽き方
特別な技術は必要ありません。
① フライパンで弱火で軽く乾煎り
香りがふわっと立ったら火を止め、冷まします。
※焦がさないのが一番大切。
② 大きい粒は軽く割る
カルダモンやナツメグなどは、
軽く砕いてから挽くと均一に。
③ ミルや乳鉢で挽く
手動ミル、電動、乳鉢。
どれでも大丈夫ですが、
「挽きすぎない」ことがポイントです。
粗挽きと細挽きは、料理の表情を変える
スパイスは、
挽き方で料理の印象が大きく変わります。
粗挽き(1〜2mm)
・香りが後から立ち上がる
・食感が残る
・料理のアクセントになる
▶︎ ステーキ、グリル、サラダ、仕上げ用
▶︎ 黒胡椒、クミン、フェンネル向き
細挽き(0.5mm以下)
・全体に均一に香る
・コクが出やすい
・馴染みがいい
▶︎ カレー、煮込み、漬け込み
▶︎ コリアンダー、ターメリック向き
どちらが正解ではなく、
どう食べたいかで選ぶ。
それだけで、
料理がぐっと自由になります。
私がよく使う、挽き方×料理の組み合わせ
・ドライキーマカレー
→ クミンとコリアンダーをやや粗挽き
香りが後から立ち、重くならない
・鶏のグリル
→ 黒胡椒を粗挽きで仕上げに
噛んだ瞬間に香りが広がる
・野菜のスープ
→ コリアンダーを細挽き
全体にやさしくなじむ
「今日は軽くしたい」
「今日は満足感がほしい」
その感覚を、
スパイスが受け止めてくれます。
挽きたては、作り置きしない
自家製パウダースパイスは、
香りが命。
私は、
まとめて作ることはしません。
必要な分だけ挽く。
余ったら、無理に使い切ろうとしない。
保存するなら、
密閉して冷暗所、
長期なら冷凍庫。
管理しすぎないことが、
台所を軽くしてくれました。
スパイスを挽く時間がくれるもの
スパイスを挽く時間は、
何かを「足す」ためではなく、
余計なものを落とす時間。
香りを感じ、
手を動かし、
今ここに戻る。
40代からの料理は、
上手くなることより、
心地よくあること。
スパイスを挽くという行為は、
そのための、
とても静かな整え方なのだと思います。

