「普通」が難しくなる現実と向き合って
最近、70代以上の親族3人が相次いで介護が必要な状態になりました。
誰もが「普通」にしていたこと——食事をする、トイレに行く、お風呂に入る、歩く。
そのどれもが、思うようにできなくなる現実に直面し、私は言葉にならない戸惑いや切なさを感じています。
肺疾患、肺がん、腎臓病。
病気そのものへの向き合い方もさることながら、介護する私自身の心と体にも、知らず知らずに負担がかかっていました。
そんなときふと思ったのです。
「薬や医療のサポートだけでなく、日々の暮らしの中で、もっとやさしく寄り添える方法はないだろうか」と。
そこで出会ったのが、植物療法(フィトセラピー)でした。
植物の力で、心と体にやさしいケアを
ハーブや精油には、古くから人々の生活を支えてきた力があります。
薬ではありませんが、リラックスを促したり、皮膚を守ったり、消化を助けたり…。
ちょっとした「不調の手前」に、自然の力でそっと寄り添ってくれる存在です。
私はまず、介護の現場でも使いやすそうなハーブと精油を調べてみました。
【介護に役立つハーブの一例】
◎ カモミール:緊張を和らげ、皮膚の炎症にもやさしい
◎ レモンバーム:不安を軽減し、認知機能にも良い影響
◎ セントジョーンズワート:気持ちの落ち込みをケア
◎ エキナセア:免疫力を高め、感染症の予防にも
◎ ラベンダー:睡眠をサポートし、鎮痛作用も
【介護で使いやすい精油の一例】
◎ ラベンダー精油:リラックス・睡眠の質向上に
◎ ティーツリー精油:抗菌・消臭・感染予防に
◎ ローズマリー精油:脳の働きをサポート、認知症ケアの補助に
◎ ユーカリ精油:呼吸器系のトラブル緩和に
◎ ベルガモット精油:ストレスの緩和、穏やかな気分に
実際にやってみた「植物療法×介護」のアイデア
介護の現場では、香りや肌に触れるケアは、思っていた以上に受け入れられやすいものでした。
たとえば——
◎ ラベンダーとティーツリーのスプレーでベッドまわりの消臭と除菌
◎ ユーカリ精油を使った呼吸を助ける芳香浴
◎ カモミールティーで心を落ち着けるティータイム
◎ 精油入りのホホバオイルで足や手のやさしいマッサージ
特別な道具がなくても、“手から伝わる安心感”と“香りのちから”で、介護を受ける方の表情がほんの少し和らぐ瞬間があるのです。
「できることが少なくなっても、あたたかくいられる」暮らし
介護をしていると、「これもできなくなってしまった」と悲しくなることがあります。
けれど、ハーブや精油がそっとそこにあることで、「でも、今できるケアがある」と前を向けるようになりました。
完璧じゃなくていい。
自然の力を借りながら、その人らしくいられる時間を少しでも長く支えたい。
それが、私が植物療法を学び始めた理由です。
40代の今、自分ができる小さな手当てを、心を込めて届けていきたいと思っています。