40代になると、人との関わりの中で
「本当は違うと感じているのに言えなかった」
「無理をしていることに、後から気づいた」
そんな経験が増えてくるように感じます。
家庭、仕事、周囲とのバランスを取るうちに、
いつの間にか“他人軸”で動くことが当たり前になり、
自分の本音がどこにあるのか、わからなくなることもあります。
そんなとき、静かに思い出したい存在が
豊玉姫命(とよたまひめのみこと)です。
龍神の血を引くこの女神は、
本音を大切にしながら生きること、
そして感情を否定せずに自分を守る強さを、
神話を通して私たちに伝えています。
豊玉姫命とは?— 龍神の血を引く女神
豊玉姫命は、海神・綿津見神の娘であり、
山幸彦(火遠理命)の妻として知られる女神です。
神話の中で印象的なのは、出産の場面。
彼女は「決して覗かないでほしい」と願いますが、
その約束は破られてしまいます。
自分の最も無防備で大切な部分を侵された豊玉姫命は、
深い悲しみとともに海へと帰ってしまいました。
この物語は、
本音や境界線を尊重されない苦しさ、
そして「自分を守るために距離を取る選択」もまた、
立派な強さであることを教えてくれます。
40代が抱えやすい“本音を抑える癖”
40代は、周囲から「わかっている人」「頼れる人」と見られやすい年代です。
その反面、
・空気を読んで言いたいことを飲み込む
・期待に応えようとして無理をする
・本音を出すことで関係が壊れるのが怖い
・「大人だから我慢」と自分に言い聞かせる
そんな場面も増えていきます。
小さな違和感を無視し続けると、
心は少しずつ疲れ、
「自分が何を感じているのか」が見えにくくなります。
豊玉姫命の神話は、
本音を抑え続けることは、心の居場所を失うことにつながる
という静かなメッセージを含んでいるように感じます。
豊玉姫命に学ぶ“しなやかな自己受容”
豊玉姫命は、怒りや悲しみを否定しませんでした。
感情を抱えたまま、その場を離れる選択をした女神です。
ここから、40代の私たちが学べることがあります。
・本音を持つことは、わがままではない
・感情に気づくことが、自分を大切にする第一歩
・我慢し続けるより、距離を取る勇気も必要
強さとは、感情を押し殺すことではなく、
揺らぎを抱えたまま、自分を守る選択ができること。
それが、豊玉姫命が教えてくれる
“しなやかな強さ”なのだと思います。
日常でできる「自分軸」に戻るための小さな習慣
神話の智慧は、日常に落とし込んでこそ意味を持ちます。
忙しい毎日の中でもできる、ささやかな実践を挙げてみます。
・感じた感情を、まず自分の中で認める
「本当は嫌だった」「悲しかった」と心の中で言葉にする
・すぐに答えを出さない
頼まれごとには「少し考えます」と間を持つ
・違和感を無視しない
小さなモヤッと感は、自分軸からの大切なサイン
・本音を話せる相手を一人持つ
全員に理解される必要はありません
これらはすべて、
人との関係を壊さずに、自分を守るための習慣です。
本音を大切にすると、関係は自然になる
豊玉姫命の物語は、
「我慢すれば関係が続くわけではない」ことを教えてくれます。
自分の気持ちを尊重し、
無理な役割を背負いすぎない。
境界線を意識することで、
人間関係は少しずつ“楽な形”へと変わっていきます。
40代は、
誰かの期待に応える人生から、
自分の感覚を信じて生きる人生へと移行する時期。
豊玉姫命の智慧は、
本音とともに生きることを許し、
心地よい人間関係と、自分らしい暮らしへ戻るための
やさしい道しるべとなってくれます。

