40代に入り、体の変化や食の影響をより深く感じるようになった今、「どんな食べ方が、私らしいのだろう?」と考える機会が増えました。
前回の記事では、「ヴィーガンという選択肢の多様さと、生き方としての視点」について触れましたが、今回は少し視野を広げて、「ヴィーガンはどこから始まり、なぜ世界で広がっているのか?」という背景をやさしくたどってみたいと思います。
目に見える“今の流行”だけでなく、そこに込められた想いや、積み重ねられてきた文化を知ることが、自分らしい選択を整えるヒントになるかもしれません。
ヴィーガンという言葉のはじまり
「ヴィーガン(Vegan)」という言葉が初めて登場したのは、1944年のイギリス。
当時、ロンドンでドナルド・ワトソンという人物が“ヴィーガン・ソサエティ”を設立し、「完全菜食主義」という新しい考え方を提唱しました。
「Vegetarian(ベジタリアン)」から始まって「beginning(始まり)」と「end(終わり)」をつなぎ合わせた造語といわれています。
つまり、動物性食品を食べないだけでなく、「動物から搾取しない暮らし」を目指すスタイルの始まりだったのです。
戦後の時代背景のなかで、「より倫理的で、環境にもやさしい生き方」を求める声が少しずつ広がり、やがてヨーロッパやアメリカ、そして世界へと広がっていきました。
宗教と文化に息づく“動物を使わない食”の知恵
「ヴィーガン」という言葉こそ近年のものですが、実はそれに近い食のスタイルは、もっとずっと昔から私たちの暮らしの中に存在してきました。
たとえば、仏教の精進料理。
日本でも馴染みのあるこの食文化は、動物の命をいただかないという考えのもと、野菜や豆、海藻などで丁寧に作られます。
五葷(ごくん)と呼ばれるにんにく・ねぎ類も避けることで、心身のバランスを整えることが目的とされています。
また、インドのアヒンサー(非暴力)という思想も有名です。
ジャイナ教や仏教、ヒンドゥー教の一部では、動物を傷つけないことが修行の一環とされ、菜食主義が長く根づいてきました。
つまり、ヴィーガン的な発想は“現代の新しいブーム”ではなく、古くから「思いやり」や「静けさ」を大切にしてきた文化の一部でもあるのです。
なぜ今、ヴィーガンが再び注目されているのか?
現代において、ヴィーガンが世界中で広がっている背景には、環境・健康・社会倫理といった複数の理由があります。
◎ 環境への配慮(SDGsや気候変動)
畜産業が地球温暖化や水資源の枯渇、森林伐採に与える影響が注目され、「地球にやさしい食生活」を選ぶ人が増えています。
国連も、植物中心の食事がサステナブルな未来に貢献すると発信しています。
◎ 健康意識の高まり
生活習慣病の予防や、腸内環境の改善、体の軽やかさを求めて、動物性食品を減らす食生活にシフトする人も。
私自身も40代に入り、食べたものがそのまま“気分”や“肌”に影響することをより感じるようになりました。
◎ 動物福祉や倫理的な選択
工場型畜産の現実や、動物実験、毛皮産業などの問題を知り、「選ばない」ことがメッセージになると考える人もいます。
それは決して過激な主張ではなく、やさしさのひとつの形なのかもしれません。
歴史を知ることで、整う私の暮らし
こうしてヴィーガンの歴史や背景を知ってみると、それは単なる“食のトレンド”ではなく、「どう生きるか」を問い直す静かな対話のようにも感じられます。
そして、「必ずこうしなければいけない」というルールではなく、
「私にとって心地よい選択はどれだろう?」と自分に問いかける機会でもあります。
40代になった今だからこそ、
身体や心とじっくり向き合いながら、「知ったうえで整えていく暮らし方」を大切にしたいとあらためて思います。
次回予告
次回は、「実は身近だったヴィーガン食 — 和食との意外なつながり」について。
肉や乳製品を使わなくても、美味しくて満足感のある食卓は、実は私たちの暮らしの中に昔からあったのかもしれません。
和食の中に息づく“植物性の知恵”を、あらためて見つめてみたいと思います。
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