金曜日の夕方になると、自然と足が向かう場所があります。「こだわりや」という、オーガニック食品のお店です。ここには、体にやさしい素材でつくられたヴィーガン弁当が並んでいます。1週間を乗り越えた自分への小さなごほうびとして、金曜日にお弁当を買うことが、私の習慣になりました。
ヴィーガン弁当を選ぶ理由は、何より素材への安心感です。有機米の白いごはん、無添加の調味料、そして動物性の食材を使わずにつくられた料理。食べていると、どこかほっと心が温かくなります。そしてもうひとつ、「作らなくていい」というぜいたくが、そこにあるからです。
金曜日のごほうび弁当
その日のお弁当にも、心と体をやさしく包んでくれるものが詰まっていました。
まず目を引くのは、ふっくらと炊き上げられた有機米の白いごはん。上に添えられた梅干しが、ほんのりとした酸っぱさで食欲をそそります。そして主役は、香ばしく揚げられたテンペのごま付き唐揚げです。発酵させた大豆からつくられたテンペは、噛むほどにうま味が広がり、ごまの風味がさらに深みを加えて、食べごたえがあります。
紅白なますのさっぱりとした酸味が食欲を引き立て、その隣には、かぼちゃのココナッツ和え。ココナッツの甘さとかぼちゃの自然な甘みが合わさって、まるでデザートのように口の中に広がります。にんじん、なす、ブロッコリーの温野菜も色とりどりに盛りつけられていて、野菜の甘みやうま味から、心地よいエネルギーをもらえるような気がしました。
テンペって、どんな食べもの?
テンペという食材を、ご存じでしょうか。私も最初は、名前は聞いたことがあるけれど、よく知らないという状態でした。でも知ってみると、とても興味深い食べものです。
テンペは、インドネシアの伝統的な発酵食品です。茹でた大豆にテンペ菌をつけて発酵させたもので、白い菌糸に覆われた、四角いブロックの形をしています。納豆と似ていますが、違いもあります。
| 納豆 | テンペ | |
|---|---|---|
| 菌 | 納豆菌 | テンペ菌(クモノスカビ) |
| におい | 独特の香り | ほとんどない |
| 粘り | 強い | ない |
| 食感 | やわらかい | しっかりした噛みごたえ |
においも粘りもほとんどないので、納豆が苦手な方でも食べやすいのが魅力です。発酵によって大豆のたんぱく質が分解され、消化しやすくなるともいわれています。食物繊維やミネラルも多く、動物性の食材を控えている人のたんぱく源としても親しまれています。
このお弁当のテンペは、唐揚げになっていました。外は香ばしく、中はしっかりとした食感。正直に言うと、お肉じゃないのかと思うほどの満足感があります。大豆の食品でここまで食べごたえが出るのかと、驚いた一品でした。
疲れた月曜日には、玄米弁当
同じお店で、もうひとつのヴィーガン弁当に出会ったことがあります。月曜日の夕方のことでした。
週末の疲れが残る月曜日。その夜はひとりのごはんだったので、自分のためだけの食事をどうしようかと考えながら、店内を歩いていました。ふと目に入ったのが、有機玄米のヴィーガン弁当です。しかも、うれしいことに2割引きのシールが付いていました。料理をする気分ではないけれど、体にやさしいものを食べたい。そんなときにこそ、こういうお弁当がありがたいのです。
このお弁当の主役は、専用の釜でふっくらと炊き上げられた有機玄米でした。この玄米が、本当においしくて。ぷちぷちとした食感の中に自然な甘みがあり、噛めば噛むほど、体の内側にやさしさが広がるような感覚になります。おかずも、すべて無添加で、動物性の食材を使っていないもの。煮物や豆のお惣菜が丁寧に詰められていて、派手さはないけれど、じんわりと心に染みる味でした。素材の味を生かした控えめな塩加減なのに、物足りなさは感じません。
同じヴィーガン弁当でも、選ぶ日が違います。
| 白ごはんのお弁当 | 玄米のお弁当 | |
|---|---|---|
| 選ぶ日 | 金曜の夕方 | 疲れた平日の夜 |
| 気分 | ごほうび、お祝い | いたわり、リセット |
| 食べ方 | しっかり味わう | ゆっくり、静かに |
その日の自分に合わせて選ぶ。それも、小さな楽しみです。
「作らない日」という考え方
このお弁当を食べる時間は、私にとって、とても大切なひとときです。料理をしないというぜいたく。そして、「がんばらなくても大丈夫」という心の余裕が、毎日の忙しさから解き放ってくれます。キッチンに立たずに、静かな時間の中で食事を楽しむ。それだけで、心も体もリフレッシュされます。無理をせずに自分を大切にすることは、こんなにも心地よいのだと実感しています。
あの月曜日の夜、私は玄米のお弁当をお皿に移して、冷やしておいた和薄荷とジャーマンカモミールのブレンドハーブティーと一緒に、ゆったりとした時間を過ごしました。キッチンに立たなかったことで生まれた、静けさと余白。それが思っていた以上に心地よくて、「頑張らなくても大丈夫」と、やさしく背中を押してくれるような時間でした。
ひとつ、私が大切にしていることがあります。お弁当を、お皿に移すことです。容器のまま食べても、味は変わりません。でも、お皿に移すだけで、「食事」になる気がするのです。手間をかけないことと、雑に扱うことは違う。そんな小さな線引きを、大事にしています。
読んでくださっている方にも、お伝えしたいことがあります。作らないことは、手を抜くことではなく、自分を大切にする選択だということです。週に一度、自分だけのために食事を選ぶ日があってもいい。忙しい毎日の中で、少しでも自分をいたわる時間を持つことが、どれだけ心に余裕をくれるか。私は、それを実感しています。
若い頃は、毎日ちゃんと作らなければと思っていました。外食やお惣菜に頼る日があると、どこか罪悪感がありました。でも今は違います。週に一度の作らない日があるからこそ、ほかの日にキッチンに立てる。引き算のほうが続くこともある。40代の暮らしの中で気づいた、大切なことのひとつです。
完璧じゃなくていい
最後に、正直にお伝えしておきたいことがあります。私は、完全なヴィーガンではありません。それでも、週に一度ヴィーガン弁当を選ぶ日がある。そのくらいの距離感が、私にはちょうどいいのです。
ヴィーガンというと、すべてを厳しく守るイメージがあるかもしれません。でも実際には、もっとゆるやかな取り入れ方もあります。週に一度だけ、動物性の食材を使わない日をつくる。朝ごはんだけ植物性にしてみる。外食では気にせず、家では意識する。どれも、立派な選択です。
ヴィーガン弁当を食べた翌朝、体が軽いと感じることがあります。胃がもたれず、朝の目覚めがすっきりしている。もちろん、これは私の感覚です。それでも、「今日は少し軽くしよう」と自分で選べることそのものが、40代の暮らしには大切なのだと思います。
毎日ヴィーガンにしようと決めたら、たぶん3日で挫折します。でも、金曜日だけなら続く。制限ではなく、選択肢のひとつとして持っておく。そのくらいの気持ちで、私はヴィーガン弁当と付き合っています。
金曜の夜に、私だけのごほうびを
週に一度の作らない日は、キッチンに立ちません。誰かが心を込めてつくってくれたごはんを、静かにいただく。お皿に移して、温かいお茶を淹れて、「よくがんばったな」と自分をねぎらう。それだけの時間が、次の1週間を支えてくれます。
もしよかったら、あなたも金曜の夜に、自分だけのごほうびを見つけて、静かな時間を楽しんでみてください。近くにオーガニックのお店があれば、のぞいてみるのもいいと思います。なければ、いつものスーパーのお惣菜でも構いません。大切なのは、「今日は作らない」と自分に許すこと。それだけで、金曜日の夜が少し特別になります。
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