40代女性のための調味料「さしすせそ」使い方ガイド 完全版 ― 味つけではなく、”整える”ための5つの基本

②【食】

料理の基本として知られる「さしすせそ」。砂糖、塩、酢(す)、しょうゆ(せうゆ)、みそ。学校の家庭科で習った記憶はあるけれど、なぜこの順番なのか、それぞれが何をしているのかまで、意識したことはあまりなかったかもしれません。

40代になって、料理への向き合い方が少し変わりました。若い頃は、レシピどおりに作ることが目標でした。でも今は、「この調味料は、何をしてくれているんだろう」と考えるようになったのです。調べていくうちに気づいたのは、5つの基本の調味料が、それぞれまったく違う役割をもっているということでした。味をつけるだけでなく、素材をやわらかくする、臭みをとる、色を美しく保つ、日持ちをよくする、そして味を整える。さしすせそは、調味料であると同時に、調理の道具でもあるのです。

この並びは、ただの語呂合わせではなく、調味料を加える順番をあらわしているとされます。砂糖が塩より先なのは、砂糖の粒が塩より大きく、あとから入れると素材にしみこみにくいため。また、塩を先に入れると素材が引き締まり、砂糖が入りにくくなるともいわれます。酢、しょうゆ、みそがあとなのは、香りが飛びやすく、加熱しすぎると風味が損なわれるからです。昔の人が経験の中から見つけたこの順番を知るだけで、いつもの料理が少し変わります。

調味料主な役割加えるタイミング
砂糖甘み、コク、食材をやわらかく最初に
塩旨みを引き出す、下ごしらえ、色を保つ砂糖のあと
酢味を整える、変色を防ぐ、日持ち後半に
しょうゆ香り、色、臭みをやわらげる仕上げ近くに
みそ発酵の旨み、コク火を止める直前に

砂糖 ― 甘さだけじゃない、整える力

40代になると、体の変化や健康への意識から、砂糖は控えるもの、と考えがちです。けれど私は、砂糖にも料理を整える大切な役割があると感じるようになりました。

砂糖は、料理全体の味をまとめ、奥行きとコクを与えてくれます。肉じゃがやかぼちゃの煮物にひとさじ加えるだけで、塩やしょうゆの塩気が丸くなり、素材の旨みがぐっと引き立ちます。ほかの調味料の橋渡しのような役割です。また、砂糖には水分を抱えこむ性質があり、肉や豆を煮るときに先に加えると、ふっくらとやわらかく仕上がります。さしすせそで砂糖が最初に来るのは、この働きを生かすためでもあります。

砂糖には、塩と同じように、素材から水分を引き出して日持ちをよくする働きもあります。果物のコンポートや梅シロップのような昔ながらの保存食に砂糖が欠かせないのは、このためです。照り焼きやいんげんのごま和えにつやを与えてくれるのも、砂糖の働きです。料理の見た目が整うと、食卓の気持ちまで明るくなります。

私が長く使っていたのは、きび糖でした。まろやかな甘さとコクが気に入って、煮物やお菓子づくりによく使っていました。その後、冷えや体調を意識するようになって、最近はてんさい糖に切り替えました。てんさい糖の原料のてん菜は、寒い土地で育つ植物で、体を冷やしにくいといわれ、オリゴ糖を含んでいるのも特徴です。粉末タイプはさらさらと溶けやすく、甘さも控えめで、料理にもお菓子にもすっとなじみます。砂糖は控えるだけのものではなく、整えるために上手に使いたい調味料だと思っています。

塩 ― 足すのではなく、整える

塩には、味をしょっぱくするだけでなく、素材そのものの旨みを引き出す力があります。煮物や炒め物、スープに少しの塩が加わるだけで、ぼんやりしていた味がきりっと引き締まります。野菜炒めの下味にひとつまみ加えると、野菜の甘みがぐっと引き立ちます。反対に、塩が足りないと、ほかの調味料をいくら足しても、味がぼやけたままになることもあります。

塩は、下ごしらえでも活躍します。肉や魚に塩をふってしばらく置くと、余分な水分と一緒に臭みが抜けます。私がよくするのは、白菜の塩もみです。鍋にそのまま入れると水っぽさが気になる白菜も、刻んで塩をまぶし、10分ほど置いてから水気を絞ると、すっきりとした味わいになり、スープも濁らず、上品に仕上がります。きゅうりや大根も、塩もみしておくと冷蔵庫で数日おいしく食べられ、旬の野菜を無駄なく使いきれます。

野菜をゆでるときに塩を少し加えると、ブロッコリーやスナップえんどうの緑が鮮やかに仕上がり、食卓が華やぎます。

年齢を重ねると、減塩が気になる方も多いと思います。私は、無理に味を薄くするより、良い塩を少しだけ使うことを大切にしています。6年以上使っているのは、海水から丁寧につくられた自然塩です。塩味に角がなく、素材の味をまろやかに引き立ててくれます。塩だけで結んだおにぎりが驚くほどおいしいのは、この塩のおかげです。本当においしい塩は、少しの量でも味を決めてくれます。塩は、足すのではなく、整える調味料なのだと思います。

酢 ― 刺激ではなく、調和

酸っぱいものは刺激が強いと感じて、なんとなく控えている方も多いかもしれません。けれど酢は、料理の味を整え、素材を清める、とてもやさしい調味料です。

こってりした肉料理にひとさじの酢を加えると、脂っこさがやわらぎ、全体の味が軽やかにまとまります。酢の物やドレッシングの酸味は、口の中をさっぱりさせ、次の一口をおいしく感じさせてくれます。40代になって、重たい味が少しつらくなってきたとき、酢のさっぱりとした酸味は、食卓に心地よい風を運んでくれます。酸味があると、塩を控えても物足りなさを感じにくいのもうれしいところです。

れんこんやごぼうを酢水につけると、変色を防いで白く仕上がります。酢には細菌が増えるのをおさえる働きもあり、酢飯や南蛮漬け、マリネなどは、日持ちをよくしながら安心感も添えてくれます。魚料理に使えば臭みがやわらぎ、しめさばや南蛮漬けのように、風味をすっきりとさせてくれます。季節の野菜のピクルスや甘酢漬けは、無理のない常備菜としてもおすすめです。

酢には、たんぱく質を固める働きもあります。ゆで卵をつくるお湯に少し加えると、殻にひびが入っても白身が流れ出にくくなり、魚の煮つけに加えると身がくずれにくくなります。酢は、仕上がりの美しさまで整えてくれる調味料です。

酢には、食後の血糖値の上がり方をゆるやかにする働きがあるともいわれています。朝の白湯に小さじ1のりんご酢を加えたり、食事に酢の物をひと品添えたりと、暮らしに小さく取り入れるのがおすすめです。私がふだん使っているのは、原材料のシンプルな有機の純米酢です。やさしい酸味とまろやかな香りで、酢の物やマリネはもちろん、煮物やスープにも自然になじみます。小さめの瓶を選ぶと、香りが新鮮なうちに使いきれます。

しょうゆ ― 香りと色を添える、万能の調味料

しょうゆは、日本の食卓に欠かせない調味料です。煮物に少し加えるだけで、色と香ばしい香りが加わり、料理全体の印象がぐっと引き立ちます。魚や鶏肉の下味に使えば、臭みをやわらげてくれます。

料理教室で教わって感動したのが、ほうれん草のおひたしの「しょうゆ洗い」です。ゆでてざるにあげたほうれん草に、小さじ1杯ほどのしょうゆをかけてから、もう一度ぎゅっと水気を絞ります。しょうゆが呼び水になって、余分な水分がしっかり抜け、あとからかける味がしみこみやすくなるのです。このひと手間で、仕上がりの味わいや食感がぐっとよくなることに驚きました。

しょうゆには、決まりで分けられた5つの種類がありますが、ふだんよく使うのは、濃口、淡口(薄口)、たまりの3つです。いちばん一般的な濃口は、味のバランスがよく、炒め物や煮物に。薄口は色が淡いので、素材の色を生かしたい煮物や吸い物に向いています。ただし、薄口は色が薄いだけで、塩分は濃口より少し高めです。とろりと濃厚なたまりは、刺身や照り焼きの仕上げに。しょうゆは香りが飛びやすいので、煮物では仕上げ近くに加えると、風味が生きます。

しょうゆに含まれる塩分や有機酸には、細菌が増えるのをおさえる働きがあり、昔から保存食の味つけに使われてきました。選ぶときの目安は、原材料が「大豆、小麦、食塩」とシンプルなもの。素材だけでじっくりつくられたしょうゆは、口あたりがやわらかく、料理全体の味も穏やかにまとまります。塩分が気になる場合は、減塩タイプを選ぶのもひとつの方法です。

みそ ― 発酵が育む、整える力

どこか懐かしく、ほっとする香りをもつみそ。大豆と麹と塩を発酵させてつくられ、その過程で生まれるアミノ酸などが、深い旨みとまろやかさを料理に与えてくれます。炒め物に少し加えるだけで、味の輪郭が整い、素材どうしがやさしくつながる感覚があります。塩気を足すのではなく、旨みで満たす。それが、みその魅力です。

発酵の過程で、大豆のたんぱく質は分解され、旨みのもとになるアミノ酸に変わります。みそは、ビタミンB群なども含む、昔ながらの発酵食品です。大豆にはイソフラボンも含まれています。毎日のみそ汁は、無理なく続けられる、体にやさしい習慣だと思います。

みそは、発酵と塩分の力で日持ちのよい調味料です。魚や肉をみそに漬けこむ「みそ漬け」は、ほどよく水分が抜けて旨みが凝縮され、焼くと香ばしい香りが広がります。

暮らしの中では、こんなふうに使っています。スープジャーに乾燥わかめとねぎ、みそを入れて、お湯を注げば、お昼に温かいみそ汁が飲めます。蒸し野菜やグリル野菜に、みそとオリーブオイル、はちみつを混ぜたソースをからめれば、ほんのり甘い副菜に。しょうゆのかわりに、みそとみりんに少しの酢を合わせたみそだれは、塩分控えめでもしっかりした味になります。

私が使っているのは、米みそと麦みその旨みが合わさった、有機の合わせみそです。国産の有機大豆、有機米、有機大麦を使い、時間をかけて熟成させたもので、みそ汁はもちろん、豚汁や鍋、肉のみそ漬けにもよく合います。みそ汁は、ぐらぐら煮立てると香りが飛んでしまうので、火を止めてからみそを溶くと、風味が生きます。加熱処理をしていない生みそなら、発酵の菌も残りやすくなります。

調味料を知ることは、暮らしを整えること

5つの調味料は、どれも、味をつけるためだけのものではありませんでした。砂糖は食材をやわらかくし、塩は旨みを引き出して下ごしらえを助け、酢は味を整えて日持ちをよくし、しょうゆは香りと色を添え、みそは発酵の力で満たしてくれる。そして、さしすせその順番にも、ちゃんと理由がありました。昔の人が経験の中から見つけた知恵が、今も台所で生きていると思うと、いつもの料理が少し特別に感じられます。

ほうれん草にしょうゆをひとさじ。白菜に塩をひとつまみ。煮物に砂糖をひとさじ。仕上げに酢を数滴。火を止めてからみそを溶く。そんな小さな知恵の積み重ねが、毎日の食卓を、そして暮らしそのものを、静かに整えてくれます。今日の一品に、ひとつだけ試してみてください。

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