梅雨から暑くなる季節。学校や職場に持っていく手づくりのお弁当、食中毒が気になりますよね。とくに夏は菌が増えやすく、お弁当の扱いにはいつも以上に気をつかいます。
防腐剤には頼りたくない。でも、家族には安心して持たせたい。そう思った私が頼りにしているのが、昔から台所で使われてきた、自然の素材の力です。ただし、それはあくまで基本の対策があってこその助っ人。この記事では、食中毒を防ぐ基本の考え方から、大葉や梅干し、酢、生姜といった身近な素材の使い方、作り置きや持ち歩きの注意点までをまとめました。
まず、3つの基本から
食中毒を防ぐには、よく知られた3つの原則があります。「つけない」「増やさない」「やっつける」。難しく聞こえますが、やることはとてもシンプルです。
ひとつ目の「つけない」は、まず手を洗うこと。これがいちばん基本で、いちばん効果があります。調理の前、食事の前、そして生の肉や魚を触ったあとは、とくに念入りに。野菜や果物も、流水でしっかり洗います。
ふたつ目の「増やさない」は、つくった料理をなるべく早く食べ、保存するなら冷蔵や冷凍にすることです。多くの菌は、人の体温に近い30〜40℃前後でとくに増えやすいとされていて、夏の室温はまさにその範囲に入ります。「あとで片づけよう」と置いておく1時間が、リスクになるのです。
三つ目の「やっつける」は、加熱できるものにはしっかり火を通すことです。中心まで75℃以上で1分以上が目安とされています。中まで温まっているかを確かめるのがポイントです。
どれも特別なことではありません。でも、できることから丁寧に心がけるだけで、台所の安心感はぐっと高まります。
大葉という、葉っぱのお守り
おにぎりに入れる具や冷まし方に気をつけるのは大切ですが、私はそこに、大葉を1枚添えるようにしています。
大葉に含まれる「ペリルアルデヒド」という香りの成分には、抗菌作用があるといわれています。お刺身のつまに大葉が添えられているのも、昔の人の知恵なのかもしれません。おにぎりに巻けば、ごはんの表面を包むという役目も果たしてくれます。ただし、大葉を巻いたからといって、傷まなくなるわけではありません。あくまで、基本の対策に添える助っ人だと考えてください。
大葉を使うときに、ひとつ気をつけたいことがあります。大葉そのものも、よく洗ってから使うこと。そして、洗ったあとは水気をしっかり拭き取ることです。水気が残っていると、かえって傷みやすくなってしまいます。
大葉は、栄養の面でもうれしい葉っぱです。βカロテンやビタミンK、カルシウムなどを含んでいて、さわやかな香りは、気持ちが沈みがちな梅雨の季節に、気分を切り替えてくれます。
昔ながらの、台所の味方
大葉のほかにも、昔から日本の台所で使われてきた素材があります。どれも、特別なものではありません。
梅干しは、酸が強く、細菌が増えるのを抑える働きがあるとされています。日の丸弁当が定番だったのは、理にかなっていたのですね。ただ、梅干しを1個のせるだけで、お弁当全体が守られるわけではありません。刻んでごはん全体に混ぜ込むほうが、効果的とされています。また、塩分を控えたものや、はちみつ漬けのような甘い梅干しは、昔ながらの梅干しよりも働きが弱いことがあります。
酢は、料理の下味やマリネ、ドレッシングにと使い道が広く、さっぱりとおいしく、日持ちもよくしてくれます。ごはんを炊くときに少し加えると、傷みにくくなるともいわれています。目安は、お米2合に小さじ1くらい。酸味はほとんど残りません。
生姜やわさびも、香りの成分に抗菌作用が知られています。すりおろした生姜を混ぜごはんに入れたり、お弁当箱のふたの裏にわさびを少しだけ塗ったりするという使い方もあります。
とろろ昆布でおにぎりを包むのも、昔ながらの知恵です。天然のものだから万能、というわけではありませんが、こうした素材を台所の小さな守り神のように取り入れると、食卓が少し穏やかになります。
おにぎりの守り方
私がよくつくるおにぎりは、大葉の香りを生かした、シンプルで続けやすいものばかりです。実山椒とじゃこのおにぎりは、山椒のさわやかな辛みとじゃこのうま味がよく合い、大葉と一緒に巻くと香りも豊かになります。ほぐした塩じゃけをごはんに混ぜて大葉で包むおにぎりは、さっぱりとした味わいで食欲をそそります。アミエビを炊き込んだごはんのおにぎりは、うま味たっぷりで香ばしい。雑穀米にばら海苔を合わせた塩むすびを大葉で包むのも、ぷちぷちした食感と海苔の風味が楽しい一品です。
ただ、混ぜごはんや炊き込みごはんは、白いごはんよりも傷みやすいとされています。夏に持ち歩くときは、保冷剤を添えて、なるべく早めに食べるようにしてください。
握るときに気をつけていることが、3つあります。まず、素手で握らないこと。ラップや使い捨ての手袋を使うと、手から菌がつくのを防げます。次に、しっかり冷ましてから詰めること。温かいままふたをすると、水滴がついて菌が増えやすくなります。急ぐときは、うちわであおぐのも効果的です。そして、具には水分の少ないものを選ぶこと。夏は、生野菜やマヨネーズ和えは避けたほうが安心です。しっかり火を通したものや、味の濃いものが向いています。
自然のものでも、注意はいる
自然のものが、すべて安全というわけではない。これも、年齢を重ねて気づいたことのひとつです。
たとえば、じゃがいもの芽や、皮の緑色になった部分。ここには、ソラニンやチャコニンという天然の毒が含まれています。加熱しても分解されにくいので、しっかり取り除いてから調理することが大切です。とくに注意したいのが、家庭菜園でとれた小さなじゃがいもです。小さいものほど毒の濃度が高くなることがあり、学校の授業で育てたじゃがいもで食中毒が起きた例も報告されています。
自然の力に助けられながらも、ちゃんと知って選ぶこと。天然だから安心、ではない。でも、正しく知れば、頼りになる。そのバランスが、いちばん現実的だと思っています。
作り置きと、持ち歩きのコツ
たくさんつくったカレーや煮物を、鍋のまま一晩置いておくのは危険です。ウェルシュ菌という菌は、加熱しても死なない「芽胞」というかたちで生き残り、料理がゆっくり冷めていくあいだに増えていきます。一晩寝かせたカレーはおいしい、といわれますが、夏はとくに注意が必要です。
私は、小分けにしてから冷まし、冷蔵庫に入れるようにしています。浅い容器に移すと冷めるのが早くなり、保冷剤の上に置くのも効果的です。
夏は、冷やすタイミングが大切です。買い物では、生ものを最後にかごに入れ、家に帰ったらすぐ冷蔵庫へ。保冷バッグを持っていくだけでも、ずいぶん違います。
お弁当を持ち歩くときは、保冷剤を一緒に。そして、直射日光の当たる場所や、車の中は避けてください。夏の車内は、短い時間で50℃を超えることがあります。
できることを、やさしく続ける
抗菌作用のある自然の素材は、強力な特効薬ではありません。それでも、毎日の暮らしに少しずつ取り入れることで、安心感や心のゆとりをくれる存在です。
忙しい毎日の中で、すべてを完璧にこなすのは難しいもの。だからこそ私は、できることを、やさしく続けることを大切にしています。今日は、おにぎりに大葉を1枚。明日は、刻んだ梅干しをごはんに。その次は、作り置きを小分けにしてみる。ひとつずつで、十分です。
自然の力に助けられながら、夏の台所も心も、ゆるやかに整えていけたら。それが、40代からの私の、ちょうどいい暮らし方です。
※本記事は一般的な情報のご紹介です。大葉や梅干しなどの自然の素材は、食中毒を確実に防ぐものではありません。手洗い、加熱、温度の管理といった基本の対策をあわせて行ってください。激しい腹痛、吐き気や嘔吐、下痢、発熱など、食中毒が疑われる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。とくに高齢の方、小さなお子さん、妊娠中の方は重くなりやすいので、早めの受診をおすすめします。
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