子どもの頃から、ずっとお腹の張りに悩んできました。夜中にお腹が痛くなって、救急に行ったことも2度あります。
小学生の頃、中学受験のために塾に通っていて、夜の授業の前には、母が持たせてくれたお弁当を食べていました。母のお弁当はいつもおいしくて、私にとって安心できる時間でもありました。それなのに、どういうわけか食べ終わると、お腹がぼこぼこと鳴り始めて、授業に集中できないほどお腹が張る日が何度もあったのです。
母のお弁当が嫌だったわけでは、決してありません。むしろ、感謝の気持ちでいっぱいでした。ただ、これから始まる授業への緊張や、「またお腹が痛くなるかもしれない」という不安を抱えながら食べていたことで、体がうまく消化できていなかったのだと思います。不思議なことに、学校の給食ではまったく平気でした。塾での夕食のあとだけ、決まってお腹が張る。そんな小さな違和感を抱えながら、大人になるまでずっと、「なんとなく不調」と付き合ってきました。
この記事は、私がグルテンフリーの暮らしにたどり着くまでと、その後の実践をまとめた記録です。きっかけになった受診のこと、切り替えたときの体の変化、発酵食品との出会い、米粉のおやつ、パスタ、そして非常時の備えまで。「制限」ではなく「楽しみ」に変わっていった過程を、そのまま綴っています。
※本記事は個人の体験と一般的な情報のご紹介です。体質は人それぞれで、すべての方に同じ変化が起こるわけではありません。お腹の不調が続く場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
30歳で言われた、ひとつの言葉
社会人になってからも、昼ごはんのあとにお腹が張るのが日常でした。午後になるとスカートのウエストが苦しくなったり、お腹にガスがたまって集中できなくなったり。午後の打ち合わせや電話の対応がつらい日もありました。それでも、周りの人には言いにくくて、ただの体質だからとあきらめていました。
30歳の頃、思い切って胃腸科を受診し、検査を受けることにしました。そこで言われたのが、「小麦粉を控えたほうがいいかもしれませんね」という言葉です。体質的に、グルテンをうまく分解できていない可能性がある、とのことでした。
でも正直、そのときはぴんときませんでした。朝ごはんはパン、昼はパスタやラーメン、おやつにクッキー。小麦は、私の食生活の真ん中にありました。グルテンフリーという言葉は知っていても、それはどこかストイックで、特別な人のための選択だと思っていたのです。
※グルテンに関わる体質は人それぞれで、医学的な診断が必要な病気もあります。気になる症状がある場合は、自己判断で食事を制限する前に、医療機関で相談してください。
小麦をやめて、体が変わった
本格的にグルテンフリーに切り替えたのは、30代の後半にさしかかってからでした。食べたあとに毎日こんなに苦しいなら、いっそ小麦をやめてみよう。ふと、そんな気持ちが湧いてきたのです。
最初の1週間は、米粉や玄米、雑穀米など、お米を中心にした食事に切り替えてみました。すると驚いたことに、お腹の張りがほとんど起きなくなったのです。午後のスカートの窮屈さもなく、体が軽く感じられる。長年のもやもやが、晴れたような心地でした。「私の体は、こうしてほしかったんだ」。初めて、体の声に気づいた瞬間でした。
最近は、小麦の代わりに米粉を使ったおやつづくりも楽しんでいます。ベーキングパウダーを使わず、シンプルな材料で焼き上げたふわふわの米粉カステラは、お腹にも心にもやさしいごほうびです。体にやさしいものでも、ちゃんとおいしい。そう実感できたとき、グルテンフリーの暮らしは、制限ではなく楽しみに変わりました。
発酵のやさしさに、助けられて
グルテンフリーの暮らしを支えてくれたもうひとつの存在が、発酵食品です。とくによく使っているのが、塩こうじと甘こうじです。
塩こうじは、鶏むね肉や魚を漬けておくだけで、驚くほどやわらかく、ジューシーに仕上がります。味つけもこれひとつで決まるので、料理の時短にもなります。甘こうじは、温かい豆乳に少し入れるだけで、ほんのり甘く、ほっとする味に。おやつ代わりや、夜のくつろぎの一杯として重宝しています。
発酵のやさしい香りや味わいには、どこか心を落ち着かせる力があるように感じます。お腹の調子が整ってくると、気分も不思議と穏やかになっていく。それを実感できるようになりました。
今、私が続けていることは、どれもシンプルです。パンや麺類を控えて、お米や米粉を中心にすること。塩こうじや甘こうじを、毎日の食事に取り入れること。お腹の調子を見ながら、無理をしない食べ方を選ぶこと。温かい食事を心がけ、冷たいものは控えめにすること。そして、ストレスを感じた日は、軽めの和食と温かい飲みもので、体をリセットすることです。お腹の調子が整ってくると、気持ちの浮き沈みも穏やかになります。それは、気合いや努力ではなく、体の内側から整った結果としてやってくるものなのだと感じています。
米粉のおやつという楽しみ
市販のお菓子は手軽ですが、添加物や甘味料が気になることもあります。それでも、私はすべてを無添加にする必要はないと思っています。忙しい日や外出先では、市販のお菓子に頼ることもあります。そのときは、原材料がシンプルで、余計なものが少ないものを選ぶ。完璧を目指さないことで、無理なく続けられています。
時間があるときは、家族と一緒に、米粉の蒸しパンやクッキー、フルーツゼリーをつくって楽しみます。甘さ控えめでも、素材のやさしい甘みが楽しめますし、一緒につくる中で、食べものへの関心や味の感じ方の違いを分かち合えるのも、手づくりおやつの魅力です。白砂糖の代わりに、きび砂糖やメープルシロップ、つぶしたバナナを使うこともあります。甘さを控えめにすると、食後のだるさや眠気も少なくなるように感じます。甘くても、食べたあとに疲れない。それを基準に選ぶと、家族みんなが安心して楽しめるおやつ時間になります。
米粉のおやつは日持ちが短めなので、小分けにして冷凍しておくと便利です。必要な分だけ取り出せるので、忙しい日でも手軽に楽しめます。実際につくっている米粉のレシピは、米粉でつくる、やさしいレシピ集にまとめています。
手づくりだけでなく、買って楽しむこともあります。自然食品店で見つけた、グルテンフリーの米粉パンです。小麦不使用、アレルゲンに配慮、無添加。そんな表示を見て、試してみたいと自然に手が伸びました。選んだのは、こしあんぱんと、さつまいものパン。袋を開けると、こんがりとした焼き色と、ころんとした形に心がなごみます。
このパンが好きな理由のひとつが、オーブンで温めて食べるという、ちょっとしたひと手間です。5〜6分ほど温めると、香ばしい香りが部屋にふわりと広がって、外はほんのりさくっと、中はもっちりふわふわになります。小麦のパンとは違って、食べたあとの重さやもたれる感じがありません。忙しい日でも、オーブンの前で待つ数分が、私にとってのスイッチのような時間になっています。40代になってからは、ただおいしいだけでなく、食べたあとも心地よくいられるかどうかで、おやつを選ぶようになりました。選ぶことそのものが、自分を整えることになっている気がしています。
グルテンフリーのパスタ習慣
3連休の真ん中の昼下がり。少しだけ手を抜きたい、でも体にやさしいものを食べたい。そんなときに選んだのが、グルテンフリーのスパゲティと、無添加のたらこを使った、混ぜるだけのパスタでした。準備はとてもシンプルなのに、食べ終わったあとは不思議と心も整っている。満足感があるのに軽い、うれしい一皿です。
材料は、とうもろこし粉でつくられたグルテンフリーのスパゲティ、無添加・無着色のばらたらこ、エクストラバージンオリーブオイル、香りづけ程度の醤油、刻んだのりです。
- パスタを表示の時間より少し短めに茹でて、水気を切る
- オリーブオイル、たらこ、醤油を加えて、やさしく和える
- 器に盛り、刻んだのりをのせてできあがり
発色剤や保存料を使っていないたらこだからこそ、素材のうま味だけで味が決まります。なお、醤油の多くには小麦が使われています。小麦をきっちり避けたい方は、小麦を使っていない醤油を選んでください。
このたらこを選ぶようになったのは、ある体験がきっかけでした。11年前、福岡の太宰府にある梅が枝餅のお店を訪ねたときのこと。お餅を焼いていた方が、「以前は明太子の工場で働いていたんです。でも、使っていた調味料や添加物の量がすごくて」と話してくれたのです。その言葉を聞いて、胸にずしんと何かが落ちました。知らず知らずのうちに、そういうものを口にしていたのかもしれない。心や体が敏感になってきた今こそ、食べるものを選ぶ目を持つことの大切さを感じた瞬間でした。
※これは一人の方の体験談で、業界全体を指すものではありません。添加物の使用は、法律の範囲内で管理されています。何を選ぶかは、それぞれの判断でよいと思います。
40代を過ぎてから、体に入れるものが心にも影響すると、とくに感じるようになりました。疲れやすさや肌のゆらぎ、気分の波。そんな小さな不調も、毎日の食事から静かに整えていける。特別な日でなくても、自分をいたわる食材を選ぶことは、未来の自分を整える、やさしい習慣なのかもしれません。
非常時にも、やさしく食べる
グルテンフリーの暮らしを続けていて、ふと気づいたことがあります。もし災害が起きたら、私は何を食べるんだろう、ということです。避難所で配られる食べものは、パンやカップ麺が中心になることが多いといわれています。小麦を控えている身にとって、これは大きな不安でした。
そこで私が用意したのが、グルテンフリーの主食です。お湯や水を注ぐだけで食べられるアルファ米は、お米が原料なので心強い存在です。ただし、五目ごはんのように味のついたものは、醤油などに小麦が使われていることがあるので、原材料を確かめてから選んでいます。白米タイプなら安心です。常温で保存できるパックごはんも、温めずに食べられるものがあり、賞味期限が数か月から1年ほどなので、使いながら補充していくのに向いています。米粉のパンや麺にも、長く保存できるものがあります。いつもと同じものが食べられるという安心感は、非常時には大きな支えになります。
備えでいちばん大切なのは、ローリングストックという考え方だと感じています。特別に買い置きするのではなく、普段食べているものを少し多めに買い、古いものから使っていく。そうすれば、賞味期限切れも防げますし、食べ慣れた味なので非常時も安心です。備えることが、日常の延長になる。これが、無理なく続けられる秘訣だと思います。
災害のときは、誰にとってもストレスの大きい状況です。そんなときに、食べられないものが配られるのは、想像以上に心細いものです。グルテンフリーに限らず、アレルギーや持病で食事に制限がある方は、自分に合った備えをしておくと安心です。いつも食べているものを、少し多めに置いておく。それだけで十分です。
お腹は、私の心の鏡だった
長いあいだ、お腹の不調に悩まされてきましたが、それは私にとって、体からのメッセージだったのかもしれません。食べ方、感じ方、生き方を少しずつ見直していく中で、体も心も、ようやく落ち着く場所を見つけてくれたように思います。なんとなくの不調を、当たり前にしないこと。自分の心と体の声を、ちょっとだけ優先してあげること。それが、私の40代を穏やかに整えてくれた、大切な習慣です。
最後に、ひとつだけお伝えしたいことがあります。グルテンフリーは、すべての人に必要なものではありません。小麦を問題なく食べられる方が、無理にやめる必要はありません。大切なのは、自分の体がどうかを知ること。私の場合は、小麦を減らすと体が軽くなった。ただ、それだけのことです。
なんとなくお腹が張る感じが続いているなら、一度、体の声に耳を澄ませてみる。そこから始まる変化があるかもしれません。完璧でなくていい。週に何日か、米粉のものを選んでみる。そのくらいから、始めてみてください。
※本記事は個人の体験と一般的な情報のご紹介であり、診断や治療を目的としたものではありません。お腹の張りや痛みが続く場合、体重が減ってきた場合などは、必ず医療機関を受診してください。自己判断で長いあいだ食事を制限すると、栄養のバランスに影響することがあります。気になる方は、医師や管理栄養士にご相談ください。
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